たしかにお姫様に憧れたことはあるけれども、一夜の過ちから親会社の若社長に「キミ以外あり得ない」と溺愛されるなんて、ありえないですよね?

「すみません。満席でして……」
「ご予約、されていないんですよね……すみません。今日は金曜の夜ですから」
「申し訳ありません。今、お席空いていなくて……」

ファミレスを出てから、手あたり次第近くの居酒屋へ入った。
目的はもちろん、しこたま飲むためだ。
けれど、どこもかしこもお断り。
仕方ない、金曜日の夜だもの。
私も、本当なら今日の夜から夏樹と会って、土日は彼と都内でデートの予定だった。
まさか、浮気相手を妊娠させたという最悪の報告から幕を開けるとは思わなかったが。
彼との時間を過ごすために、研修を受ける三日も前に前乗りした自分が、今では滑稽である。
(どうしよう……都内って慣れてないから、ホテルから離れるのも……仕方ない。コンビニでお酒買って、大人しく部屋で飲もう)
居酒屋という賑やかな場所で、楽しく酔って忘れようという計画が崩れて踵を返して店を出ようとした瞬間だった。

「どうも。今日って、テーブル席じゃないですか?」

背後にいた長身の男性がそう尋ねると、先程簡単に私をあしらった接客ではなく、愛想よく頭を下げた。

東堂(とうどう)様っ! いつも、ありがとうございますっ。えぇ、もちろんいつものテーブル席をご用意していますっ」

この男、一人だというのにテーブル席を独占しようとしているのか。
そう思うと、うわぁと引いてしまった。
しかし、男性はなぜか私をじっと見ている。
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