たしかにお姫様に憧れたことはあるけれども、一夜の過ちから親会社の若社長に「キミ以外あり得ない」と溺愛されるなんて、ありえないですよね?
「お姉さん。よかったら一緒に飲みませんか?」
「……はい?」
私は多分、ひどい顔をしていると思う。
先ほどまで引いていた男から、一緒に飲まないかと――ナンパをされたのだから。
「いや、私は……」
「飲みたいからここに来たんでしょう? 俺も今日は誰かと飲みたい気分なんです。よかったら付き合ってください。もちろん、俺が奢ります」
この男、いつも一人でテーブル席を独占しているのだという新しいドン引きエピソードが加わった。
しかし、奢りと言われれば気持ちが揺らいでしまう。
先ほど、頼んだものの飲んでいないカプチーノのために、千円を置いたことを思い出した。
千円ではお釣りが来る。
私が奢って、アイツらのどちらかが飲んで、その上お釣りの小銭もアイツらのモノになるのかと思うと、沸々と怒りがわいてきた。
そして私は、こくりと頷いた。
「ご一緒してもいいのなら」
「えぇ、もちろん。俺が誘ったので」
そして、私はこの男――後に一夜の過ちとなったイケメンと飲んだ。
「三年も付き合ったんですよ?」
「それはきついですね」
「しかも妊娠ですよ!?」
「それは彼が悪い」
「ですよね!?」
話の全ては覚えていないけれど、こんな話をしたのは覚えている。
とても聞き上手で、欲しい言葉を言ってくれた。
最初はぽろり、ぽろりと。
最後には酒の勢いに任せて、夏樹とのことを喚き散らしていた気がする。