たしかにお姫様に憧れたことはあるけれども、一夜の過ちから親会社の若社長に「キミ以外あり得ない」と溺愛されるなんて、ありえないですよね?
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そして迎えた研修当日。
土曜日は散々だった。
夏樹との終わった関係を思い出して泣いたかと思えば、一夜の過ちを後悔して頭を抱える。
まさに感情のジェットコースターだった。
けれど、私が何のためにここへ来たのか――月曜日からの研修のためである。
日曜日には、両頬をパチンと手で挟んで気持ちを切り替えた。
私の勤める巣鴨食品は、日本でその名を知らない者はいないであろう大手食品グループ・東堂コーポレーションの子会社である。
東堂コーポレーションは食品を中心とするグループ企業だが、現在は多種多様な事業を展開している。
事務所は港区に構えている。
セキュリティーは厳しく、社員証に埋め込まれたチップが入館証の代わりになる――のだが。
「え……嘘、でしょう……!?」
社員証は首にかけられるストラップの付いているもの。
しかし、巣鴨食品では社員証を首からかけることはなく、普段はスーツのポケットに忍ばせている。
出退勤のタイムカードに登録するために使っている。
そのため、入館証代わりにスキャンするまで社員証を失くしてしまったことに気付かなかったのだ。
血の気がサッと引き、何度もポケットを確認する。
鞄の中も何度も確認した。
しかし――やはり、ないのだ。