Bitter & Sweet


「なに?」

「……ううん」

「なんだよ、なんか言いたそうな顔してっけど」

「私の彼氏は、いつ見てもかっこいいなあ、って」



見上げた、私には不釣り合いなくらい整った顔は、ドキドキと波のように大きく鼓動を揺さぶってくる。

女の私でも羨んでしまうような、きめ細やかなシミひとつない白い肌に、切れ長の二重瞼ふたつと、まっすぐ筋の通った小鼻、そして、薄く血色の良い唇がコンパクトに収まっている。

天は二物を与えずと言うけれど、これで頭脳明晰、運動神経も抜群とくれば、当然ながら周りの女の子たちは放っておかないわけで、入学して2年目、今も尚、櫂の周りには常日頃から黄色い声が絶えず、クラスメイトのみならず、他のクラスの女の子たちで溢れ返っている。

けれど、櫂に対して本気で愛の告白をした女子なんて知ってる限り私くらいで、公の場で冗談交じりに想いを伝える女の子は存在しても、櫂を密かに呼び出し、隠れて想いを伝えた子がいるという噂を、私は過去に一度も耳にしたことがない。


「……遅刻すんだろ、早く行くぞ」


照れ隠しなのか、ふいっと顔を背けた櫂は、颯爽と部屋を出て行ってしまった。

私も後を追うように部屋を出て、学校近くまでの道のりを肩を並べて登校する。

これが、この僅かな時間だけが、私たちが恋人同士らしくいられる日課のようなスタイルで、もうすぐ付き合って1年経つけれど、いまだにデートらしいデートというものはしたことがない。

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