Bitter & Sweet


「ねえ、今日の夜、家に行ってもいい?」

「わりい、バイトで遅くなっから」

「せっかく、夕飯一緒に食べようと思ったのに…」



櫂の父親は単身赴任、母親は夜勤務めで朝まで帰らない日々が続くと、家が隣同士ということもあり、こうして私は櫂の部屋へ入り浸ろうとする。

けれど、櫂の返事はアルバイトを理由にいつも後ろ向きだ。

学校では思うように傍にいられないから、せめて、家では僅かな時間だけでも恋人気分を味わいたいという私の気持ちなんて、櫂には分からない。

きっと、櫂の気持ちは、私と真逆の位置にいる。



「バイト、無理して身体壊さないようにね」

「なに、心配してくれんの?」

「するよ、するに決まってるじゃん」

「なに剝れてんだよ」

「別に、夜会えないからって、全然1ミリも怒ってないよ」



自分でも刺々しい感情をぶつけてしまい、良くないことだと頭では理解しているつもりでも、櫂の、こんな私を前にしても、余裕綽々と手のひらで転がしてくるようなところが悔しくもあり、けれど、そんな彼との何気ない会話が失くなった後を想像すると、寂しく感じてしまうくらいには好きだったりする。

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