Bitter & Sweet
「そんなにバレたくねえのかよ」
「だって、学校で噂になったら恥ずかしいもん」
ただのクラスメイトから関係性が変わった当時から、無意識に周りの視線を気にするようになった。
右京櫂という、非の打ち所がない彼氏と付き合うようになってから、人一倍、自分の容姿に落ち込むようになった。
当時からの癖が身体に染みつき、どこか不服そうな櫂の声を右から左へ聞き流しながら、同じ学校の生徒がいないか、ぐるりと辺りを見渡す。
いつも、学校近くの、人気のない公園の茂みで櫂とはお別れして、そこから数分の時間を置いて、私たちは別々に登校する。
「バイト、終わったら連絡すっから」
「うん、待ってるね」
ひらひらと、歩き出した背中に軽く手を振っていれば、ふと立ちどまった櫂の長いふたつの脚は、躊躇うことなく再び戻ってくる。
「どうしたの?」
覆い被さってくる影が陽の光を遮り、手繰り寄せられるように見上げた直後、その姿は小さな顔の角度を変えながら、気づけば、私の唇を塞いでいた。
「ちょ、ちょっ、待っ…」
広い胸板を押して咄嗟に距離を作ろうとするけれど、がしりと櫂の手のひらに後頭部を固定されたまま、私の身体は少しも身動きがとれずにいる。
「ん……や、櫂…」
ちゅっ、ちゅっと、啄むようなリップ音が厭らしく耳に残る。
敢えて聞こえるように音を立てているのか、それは次第に激しさが増し、じゅるっと舌を吸われ、歯列をなぞってくるような舌先の感覚が気持ちよく、その巧妙なキスの波に、いつの間にか夢中になっている自分がいた。
朝早くから、こんな健全な場所で、絶対にダメなのに、思わず漏れてしまう淫らな声を、最早とめることなんてできなかった。