放課後のジントニック、美術室の魔法
【焦燥の放課後と、甘いお誘い】
「おい」
月曜日の昼休み。屋上へと続く階段の踊り場で、大輝が購買の焼きそばパンを齧りながら、ニヤニヤとした顔で俺の肩を小突いてきた。
「土曜日はどうだったわけ、サマーカーディガン先輩」
「……声がでかい。普通に、美術館行って、お茶しただけ」
「周りに人いねぇから大丈夫だよ。それにしてもお茶か。文字通り爆速で消えた甲斐があったじゃん。次のでーとは決まってんの?」
「いや、まだ何も…というか、次があるかわからん。」
「そんなうまくいかなかったのか?」
「いや、本当に楽しそうにしてくれてたけど、今回はマスターがチケット持ってたからたまたま誘えただけっていうか…」
大輝はひとしきり俺を小突いて面白がっていたが、ふと視線を落とし、小さくため息をついた。
「そっか…。まぁ、航平が必死なのは分かるけどさ。夏海にはちゃんとフォロー入れとけよ?」
「え?夏海がなんか言ってた?」
「言ってたっていうか、顔」
大輝は階段の手すりに背中を預け、それ以上は何も言わなかった。ただ、どこか苦苦笑い混じりの、それでいて俺たち二人を静かに見守るような視線を一瞬だけ向けて、残りのパンを口に放り込んだ。
「……?あ、ああ。わかったよ」
大輝がそれ以上口を挟まないのは、いつものことだ。
俺の『秘密』も、結衣さんとのデートのことも、全部知っているのは大輝だけ。だからこそ、その大輝が夏海のことを口にするだけで、胸の奥が少しだけチクリと痛む。
一歩歩くたびに触れた結衣さんの指先の柔らかさを思い出しては、心臓が高鳴る。けれど、その幸福感のすぐ隣には、幼馴染に大きな嘘をつき続けている後ろめたさが、澱のように沈んでいた。
月曜日の昼休み。屋上へと続く階段の踊り場で、大輝が購買の焼きそばパンを齧りながら、ニヤニヤとした顔で俺の肩を小突いてきた。
「土曜日はどうだったわけ、サマーカーディガン先輩」
「……声がでかい。普通に、美術館行って、お茶しただけ」
「周りに人いねぇから大丈夫だよ。それにしてもお茶か。文字通り爆速で消えた甲斐があったじゃん。次のでーとは決まってんの?」
「いや、まだ何も…というか、次があるかわからん。」
「そんなうまくいかなかったのか?」
「いや、本当に楽しそうにしてくれてたけど、今回はマスターがチケット持ってたからたまたま誘えただけっていうか…」
大輝はひとしきり俺を小突いて面白がっていたが、ふと視線を落とし、小さくため息をついた。
「そっか…。まぁ、航平が必死なのは分かるけどさ。夏海にはちゃんとフォロー入れとけよ?」
「え?夏海がなんか言ってた?」
「言ってたっていうか、顔」
大輝は階段の手すりに背中を預け、それ以上は何も言わなかった。ただ、どこか苦苦笑い混じりの、それでいて俺たち二人を静かに見守るような視線を一瞬だけ向けて、残りのパンを口に放り込んだ。
「……?あ、ああ。わかったよ」
大輝がそれ以上口を挟まないのは、いつものことだ。
俺の『秘密』も、結衣さんとのデートのことも、全部知っているのは大輝だけ。だからこそ、その大輝が夏海のことを口にするだけで、胸の奥が少しだけチクリと痛む。
一歩歩くたびに触れた結衣さんの指先の柔らかさを思い出しては、心臓が高鳴る。けれど、その幸福感のすぐ隣には、幼馴染に大きな嘘をつき続けている後ろめたさが、澱のように沈んでいた。