放課後のジントニック、美術室の魔法
「ちょっと大輝、面白がってんじゃないわよ!」
すかさず横から口を挟んだのは、夏海だった。彼女はスクールバッグの紐をぎゅっと握りしめ、眉をひそめて俺の顔を覗き込んでくるその目は、いつもの怒った顔とは少し違って、どこか必死に見えた。大輝の前だから強がっているのか、それとも俺との『同盟』を本気で考えてくれているからなのか、その時の俺にはよく分からなかったけれど、夏海の指先がかすかに震えているのだけがやけに目についた。
「航平、確かにものすごい進展だけど…大人の本気の嫉妬舐めちゃダメだからね?結衣先生は、航平が『自分の知らない女の子と仲良くしてる』と思って、本気で傷ついて、プライドを捨ててやきもちを白状してくれたの。それだけあんたに対して本気なんだよ」
「あ、ああ……分かってる」
「分かってない!次のデート、あんたから何か理由を作ってでも誘いなさい。あんな中途半端なやきもちの答え合わせしただけで終わらせて逃げたら、男として最低だから。次のデート、ちゃんと男の子としてリードして、いい雰囲気作ってきなさい!この調子で頑張んなさい!」
夏海はフンスと鼻を鳴らし、俺の胸元をぽかぽかと力強く叩いた。隣を見ると、大輝は階段の手すりに背中を預けたまま、小さく息を吐いて頷いている。あいつがそんなふうに真面目な顔をするときは、大抵、俺たちのことを本気で心配してくれているときだった。
「まぁ、夏海のいう通りだな。相手をそこまで揺さぶっといて、チキって『大学生のポーカーフェイス』の裏に隠れてたらダサすぎるわ。ちゃんと航平から男見せてこい。位置について、シュート外すなよ?」
「大輝……。夏海も、ありがとう」
二人が背中を押してくればくれるほど、俺の胸の奥には、温かい感謝と一緒に、ドロリとした冷たい澱が溜まっていった。
夏海からはいい雰囲気を作ってきなさいと背中を押されたけど、もとよりに、自分から好きだと告白して関係を進める勇気なんて、これっぽっちもなかった。俺は十七歳の高校生で、彼女は学校の先生だ。グラウンドから見上げることしかできなったあの人に、嘘の身分のまま「付き合ってください」なんて、俺の理性が許すはずがない。
すかさず横から口を挟んだのは、夏海だった。彼女はスクールバッグの紐をぎゅっと握りしめ、眉をひそめて俺の顔を覗き込んでくるその目は、いつもの怒った顔とは少し違って、どこか必死に見えた。大輝の前だから強がっているのか、それとも俺との『同盟』を本気で考えてくれているからなのか、その時の俺にはよく分からなかったけれど、夏海の指先がかすかに震えているのだけがやけに目についた。
「航平、確かにものすごい進展だけど…大人の本気の嫉妬舐めちゃダメだからね?結衣先生は、航平が『自分の知らない女の子と仲良くしてる』と思って、本気で傷ついて、プライドを捨ててやきもちを白状してくれたの。それだけあんたに対して本気なんだよ」
「あ、ああ……分かってる」
「分かってない!次のデート、あんたから何か理由を作ってでも誘いなさい。あんな中途半端なやきもちの答え合わせしただけで終わらせて逃げたら、男として最低だから。次のデート、ちゃんと男の子としてリードして、いい雰囲気作ってきなさい!この調子で頑張んなさい!」
夏海はフンスと鼻を鳴らし、俺の胸元をぽかぽかと力強く叩いた。隣を見ると、大輝は階段の手すりに背中を預けたまま、小さく息を吐いて頷いている。あいつがそんなふうに真面目な顔をするときは、大抵、俺たちのことを本気で心配してくれているときだった。
「まぁ、夏海のいう通りだな。相手をそこまで揺さぶっといて、チキって『大学生のポーカーフェイス』の裏に隠れてたらダサすぎるわ。ちゃんと航平から男見せてこい。位置について、シュート外すなよ?」
「大輝……。夏海も、ありがとう」
二人が背中を押してくればくれるほど、俺の胸の奥には、温かい感謝と一緒に、ドロリとした冷たい澱が溜まっていった。
夏海からはいい雰囲気を作ってきなさいと背中を押されたけど、もとよりに、自分から好きだと告白して関係を進める勇気なんて、これっぽっちもなかった。俺は十七歳の高校生で、彼女は学校の先生だ。グラウンドから見上げることしかできなったあの人に、嘘の身分のまま「付き合ってください」なんて、俺の理性が許すはずがない。