幼なじみの蓮くんが、最近なんか甘い
気になる理由
次の日の朝。
教室に入って席についた私は、鞄から教科書を取り出しながら、何度も教室の後ろを気にしていた。
別に、誰かを待っているわけじゃない。
そう思いながらも、廊下から聞こえてくる足音や話し声に、つい顔を上げてしまう。
まだ蓮は来ていなかった。
「……まだかな」
思わず口から出た言葉に、自分で驚く。
私は慌てて前を向いた。
蓮が来る時間なんて、いつもだいたい決まっている。
それを知っているのも、幼なじみだから。
……そういうことにしておけばいい。
そう思っていたのに。
少しして、教室のドアが開く。
見慣れた姿が入ってきた瞬間、胸の奥がふっと軽くなった。
蓮はいつもと変わらない顔で、自分の席へ向かっている。
私のほうを見ると、ほんの少しだけ目を細めた。
「おはよう、結菜」
「おはよう」
それだけのやり取り。
いつもなら、それで終わる。
なのに今日は、その声を聞けただけで嬉しいと思ってしまった。
どうしてなのかは、自分でも分からなかった。