幼なじみの蓮くんが、最近なんか甘い
放課後。
帰る準備をしながら、私は何度も時計を見た。
今日は蓮と一緒に帰る約束をしていたわけじゃない。
だから、待つ必要もない。
そう思っていたのに。
気づけば、鞄を持ったまま教室に残っていた。
友達が帰っていくのを見送り、教室の中が少しずつ静かになっていく。
それでも、私は席を立てなかった。
「……何してるんだろ、私」
自分に呆れて、苦笑する。
すると、廊下から足音が聞こえた。
顔を上げると、教室の入り口に蓮が立っていた。
「結菜、まだいたんだ」
「うん。なんとなく」
「帰る?」
「……うん」
自然に返事をして、私は蓮の隣に並んだ。
教室を出て、廊下を歩く。
それだけなのに、さっきまでの落ち着かなさが嘘みたいになくなっていく。
隣に蓮がいる。
そのことが、どうしようもなく安心する。
「今日、一緒に帰ろうと思ってた」
蓮が何気なく言った。
私は少し驚いて、顔を上げる。
「ほんと?」
「うん」
たったそれだけ。
なのに、また胸が嬉しくなる。
私はその理由を考えないようにして、前を向いた。
まだ、この気持ちに名前をつけるには早い気がした。