幼なじみの蓮くんが、最近なんか甘い
学校に着いてからも、朝のことが頭から離れなかった。
別に、何かあったわけじゃない。
ただ、袖が触れただけ。
それなのに。
席に座ってからも、何度もその瞬間を思い出してしまう。
「結菜」
友達に呼ばれて顔を上げる。
「なに?」
「今日ぼーっとしてない?」
「してないよ」
「してるって」
笑われて、私は慌てて教科書を開いた。
授業が始まってしまえば、きっと忘れられる。
そう思った。
けれど、黒板を写しながらも、ふとした瞬間に朝のことを思い出す。
蓮の隣にいたときの距離。
いつもなら気にしなかったはずなのに。
最近は、どうしてこんなことばかり気になるんだろう。
昼休みになって廊下へ出ると、ちょうど蓮が向こうから歩いてきた。
目が合う。
「結菜」
名前を呼ばれただけで、胸が少し跳ねた。
「……なに?」
「午後、移動教室だよ」
「あ」
すっかり忘れていた。
「教えてくれてありがと」
「忘れそうだと思った」
「ひどい」
笑いながら言う。
蓮も少し笑った。
その顔を見ていると、さっきまでのことなんてどうでもよくなった。
……そう思ったのに。
やっぱり、少しだけ気になっていた。