幼なじみの蓮くんが、最近なんか甘い

 学校に着いてからも、私は朝の会話を何度も思い出していた。


「……俺も」


 蓮の声。

 それだけなのに。

 なんだかずっと頭から離れない。

 授業中も。

 休み時間も。

 気づくと考えてしまう。


「結菜」

「ん?」


 友達に呼ばれて、顔を上げる。


「さっきからずっとにやにやしてる」

「してない!」

「してるよ」

「してないってば」

「何かいいことあった?」

「……朝、蓮と一緒に来た」

「それだけ?」

「それだけ」

「ふーん」


 友達は意味ありげに笑った。


「それだけでそんな顔になるんだ」

「……」


 私は何も言えなかった。

 だって。

 本当に嬉しかったから。

 昼休みになって、私は飲み物を買いに廊下へ出た。

 すると。


「あ」


 向こうから蓮が歩いてくる。


「結菜」

「どこ行くの?」

「購買」

「私も」

「じゃあ一緒に行く?」

「うん」


 並んで歩く。

 廊下はいつもより人が多くて、少し狭かった。

 前から人が来た瞬間。


「こっち」


 蓮が私の腕を軽く引いた。


「……!」


 自然に蓮の隣へ寄る。


「危ないから」

「……うん」


 離れたあとも。

 腕に残った感触が、なぜか気になった。

 ほんの一瞬だったのに。

 心臓だけが、いつまでも落ち着かなかった。
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