氷の副社長は、熱に浮かされた私を帰さない
 五日目。
 身体はもう、ほとんど元通りになり、私はキッチンに立つことを許可された。
 正確には、押し切ったともいう。

「五日間ごちそうになったので、一回くらい作らせてください」
「必要ない」
「私の気持ちの問題です」
「……座っていろ」
「じっとしてると、落ち着かないし、逆に体力が落ちます」

 最終的に、彼が折れた。ただし「監督する」という条件で。
 監督というのは、要するに隣に立つということらしい。

 結論から言うと、この人は、包丁が絶望的に下手。
 人参の輪切りが、厚さ一センチから五ミリの間を自由に往復して、玉ねぎを切るときは、なぜか刃を垂直に振り下ろす。

「副社長、それは、切るというより処刑です」
「切れているだろ」
「形が民主的じゃないです」
「味は変わらない」
「変わります」

 私が笑うと、包丁を持つ手が止まり、視線がこちらへ向く。ほんの少しだけ――本当に、ほんの少しだけ、目元がゆるんだ。

「……笑うな」

 もう、怒っていないのは知っていた。
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