『破滅の先で、愛を知る』 〜サレ妻の復讐劇と、危険な年下男の溺愛〜
会場の照明が落ちる。
巨大スクリーンが点灯した。
雅也がマイクを握る。
「本日はお忙しい中――」
そこで。
言葉が止まった。
スクリーン中央。
白い文字が浮かび上がる。
『神谷雅也氏による不貞行為および会社資産の不正流用に関する記録』
一瞬。
誰も反応できなかった。
「……は?」
雅也の口から、間の抜けた声が漏れた。
次の瞬間。
映像が切り替わる。
日付。
ホテル名。
雅也と莉子。
二人が並んで歩く姿。
ざわっ。
会場が揺れた。
「ちょ……」
莉子の顔から笑みが消える。
さらに画面が切り替わる。
振込記録。
架空の外注先。
資金の移動。
莉子名義の口座へ流れた金額。
そして。
スピーカーから音声が流れた。
『大丈夫だって。栞は何も疑ってないから』
雅也の声。
栞は目を閉じた。
知っていた。
事前に聞いていた。
何度も。
それでも。
胸の奥が痛んだ。
『あいつ、俺の言うことなら何でも信じるんだよ』
笑い声。
莉子の声が重なる。
『奥さん、かわいそう』
そして。
雅也が笑った。
その瞬間。
七年間の何かが。
栞の中で完全に死んだ。
「止めろ!」
怒声が響く。
「止めろ! 誰だ、こんなものを流してるのは!」
雅也がスタッフへ詰め寄る。
誰も動けない。
「消せ! 今すぐ消せ!」
壇上から降りようとして、足をもつれさせる。
さっきまで拍手を浴びていた男が。
今は。
何十人もの視線に晒されている。
「神谷さん、これは……」
「違います!」
「この振込記録は?」
「捏造です!」
「では音声は?」
「だから違うと言ってるだろ!」
雅也の声が裏返る。
「莉子!」
名前を呼ばれ。
フロアの隅で莉子が肩を震わせた。
「わ、私は……知らない……」
「お前だって――」
「知らない!」
莉子が叫んだ。
その場から逃げようとする。
けれど。
どこへ行っても、人の目がある。
祝福に満ちていた会場は。
もうない。