​『破滅の先で、愛を知る』 ​〜サレ妻の復讐劇と、危険な年下男の溺愛〜

ホテルを出た瞬間。

冷たい夜気が頬に触れた。

栞は大きく息を吸った。

終わった。

そう思った。

これで。

全部。

終わった。

なのに。

「…………」

嬉しくなかった。

もっと爽快だと思っていた。

雅也が絶望する姿を見れば。

七年間の苦しみが報われると思っていた。

違った。

胸の中にあるのは。

ぽっかりとした穴だけ。

「……私」

何がしたかったんだろう。

足が止まる。

そのとき。

視線の先に。

黒い影が見えた。

街灯の下。

黒いコート。

律。

栞を見つけると。

彼は微笑んだ。

「お疲れさまでした」

いつもの声。

「見事でしたよ、栞さん」

近づいてくる。

「最高のショーだった」

律が腕を伸ばす。

けれど。

「待って」

栞はその胸へ手を当てた。

律が止まる。

「……栞さん?」

「ひとつだけ」

栞は彼を見上げた。

「教えて」

ポケットへ手を入れる。

取り出したのは。

折り畳まれた紙。

古い新聞記事のコピーだった。

律の目が。

ほんの僅かに動いた。

それだけで。

栞には分かった。

「やっぱり」

「…………」

「知ってるのね」

紙を開く。

五年前の記事。

『蓮見建設社長、不正取引疑惑の渦中で死亡』

小さな記事だった。

けれど。

栞は何度も調べた。

当時、蓮見建設と取引していた企業。

担当者。

金の流れ。

そして。

神谷雅也という名前。

「あなたのお兄さんだったのね」

律の表情から。

笑みが消えた。
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