​『破滅の先で、愛を知る』 ​〜サレ妻の復讐劇と、危険な年下男の溺愛〜

――数か月後。

潮の香りがする。

窓の向こうから。

ざあん。

ざあん。

規則正しい波の音が聞こえていた。

海沿いの小さな町。

古い平屋。

栞は縁側近くのテーブルで、小さなガラス瓶に花を活けていた。

庭で摘んだ花だ。

豪華ではない。

名前さえ知らない。

白く小さな花。

一本。

二本。

少し角度を変える。

「……うん」

栞は微笑んだ。

これでいい。

昔なら。

もっと考えていた。

花瓶とのバランス。

部屋の配色。

人からどう見えるか。

完璧かどうか。

でも。

今は。

自分が綺麗だと思えば、それでいい。

窓ガラスに、自分の顔が映る。

少し伸びた髪。

薄い化粧。

ゆったりとした服。

神谷雅也の妻だった頃とは。

まるで違う。

「…………」

不思議だった。

何も持っていない。

肩書きも。

華やかな暮らしも。

完璧な妻という役割も。

それなのに。

今の自分の方が。

ずっと自分らしい。
< 24 / 27 >

この作品をシェア

pagetop