『破滅の先で、愛を知る』 〜サレ妻の復讐劇と、危険な年下男の溺愛〜
日付。
時刻。
場所。
雅也の名前。
有村莉子の名前。
ホテル。
レストラン。
タクシー。
クレジットカードの利用履歴。
二人が並んで歩いている写真。
雅也が莉子の腰へ手を回している写真。
ホテルへ入っていく後ろ姿。
ページをめくる。
さらに。
数字。
会社名。
振込先。
「……何、これ」
喉が乾く。
「雅也の会社の……お金?」
「正確には、取引先への外注費として処理されています」
律の声は淡々としていた。
「ですが、実際には存在しない取引です」
栞は顔を上げる。
「じゃあ、この振込先は……」
「有村莉子名義の口座」
「…………」
指先から血の気が引いた。
不倫だけではない。
会社の金まで。
「これ……」
栞は震える手で手帳を閉じた。
「どこで手に入れたの?」
「栞さん」
「答えて」
初めて、律に強い声を向けた。
それでも彼は表情を変えなかった。
むしろ。
少し嬉しそうに見えた。
「その顔」
「え?」
「好きです」
「今、そんな話してない」
「怒れるようになった」
律が目を細める。
「初めて会った夜のあなたは、泣くことしかできなかった」
胸が詰まった。
「でも今は違う」
律の指が、手帳の上に置かれた栞の手へ重なる。
「ちゃんと怒ってる」
「…………」
「それでいいんですよ」
優しい声。
「あなたは、もっと怒っていい」
その言葉が。
栞の胸の一番脆いところへ入り込んできた。