マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

「ど、どうし……あっ、電話切れちゃう……!」

震えるスマホ。
ベッドの脇に落ちてしまったメモ。
時間より早めにかかってきた電話。
一度にこなすことが増えると一人でわたわたとしたが、「え、えいっ」と通話ボタンを押した。
もちろん繋がる電話。
次にメモに手を伸ばそうとするけれど、ガタガタっと物音が響くだけで取れない。
繋がってることを思い出して、ハッとし慌てて耳元に当てれば先ほどまで練習したが、頭の中が真っ白になってしまう。

「は、はじめましてっ。あ、あのっ。RUI、ですっ。えっと、あのっ……!」

名前を名乗ることはできた。
けれど、これは完全に失敗である。
(ど、どうしよう……もう、完全に……失敗だ……)
ガックリと肩を落としていたら、耳元からくすりと笑う声が聞こえる

「へ……?」
「すみません。RUIさんって、おっとりしてる方かと思っていたので。少し忙しそうですね。電話しても大丈夫ですか?」

電話越しで少しくぐもっていても、低く落ち着いた、大人っぽい男性の声だ。
五つしか年は違わないはずなのに、ずいぶん年上の人のような包容力を感じる声に、緊張の糸が少し緩んだ。
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