マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「初花」
「な、なんですか……」
恥ずかしさで、顔が熱くなって颯馬さんの顔を見れない。
「来週に親戚を含めた挨拶が決まっただろ?」
「う……そう、ですね」
以前、颯馬さんから言われた親戚の集まりは、来週の土曜日に開催されることになった。
そこには、両親はもちろん華蘭の社長も同席する。
言われると、別の意味で緊張してしまう。
「親にはもう紹介してて、親戚にも紹介するんだから、もう――俺から逃げられないってこと。自覚してる?」
「っ!」
颯馬さんは、そんな大事なことをくすりと笑って済ませようとしている。
私はとても意識して、緊張しているというのに。
「バックレられないわけだ。俺がいる人生という結末からは」
「っ……ば、バックレなんて、もうしませんっ。その……ずっと隣でいたい、ですから」
恥ずかしいけれど、これは言いたい。
耳まで熱くなりながらも彼にそう言えば、にやりと口角が上がる。
「もう一度キス、しても良い?」
「っ~! こ、ここではダメですっ」
「ここでは?」
「もうっ!」
くすくすと揶揄う彼に、私は恥ずかしいと思いながらも、心は温かかった。
「みゃあっ」
人懐っこい猫も、私たちのことを祝福しているようである。
【完】

