マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「ん? どんなことが初めてなの?」
「その、男の人とメッセージでやりとりとか、電話をしたのも、こうやって、どこかへ行くのも……全部、全部初めてで……!」
「……それ、自分が可愛いこと言ってるって分かってる?」
「へ?」
可愛い……?
どこにそんな要素があったのだろう。
そう思って小首を傾げれば、彼はまたくすりと笑った。
「全部、俺が初めてってことだろ」
「はい……私、颯馬さんみたいな人と付き合えるなんて今でも信じられなくて……」
これほど素敵な人の隣にいる自分なんて――数か月前までなら、信じられなかった。
きっと、今の自分が過去の自分に会って伝えに行ったとしても、信じないだろう。
「初花」
名前を呼ばれて、颯馬さんの方を見ると、片手を軽く頬に添えられた。
「は、はい……」
「ね。今俺が欲しい初めて、貰ってもいい?」
そう言うと、颯馬さんが親指で、私の唇をそっとなぞる。
何だろう――そう思って、こくりと頷いた。
「っ……!」
顔がだんだんと近づいて、そっと触れるだけの口づけを交わした。
驚きと恥ずかしさの入り混じった複雑な感情を処理しきれなくて、声が漏れる。
「ん。満足」
「そ、颯馬さんっ……! こ、ここっ……公園っ。ひ、人がいるかもしれないのにっ」
「大丈夫。周りに人なんていない。それにそれって――俺の部屋とか、誰もいなかったら、何しても良いってこと?」
「~っ!」
悪戯に目を細めて言う颯馬さんに、何も言えなくなってしまう。