落ちこぼれ芸能科ですが、演技の天才ヒロインが舞台で全員勝たせます。

第五章

翌日の放課後、C組の空気は昨日より少しだけ引き締まっていた。

 劇場に集まったみんなの顔には、まだ不安もある。けれど、何もしないままうつむいていた昨日とは違う。今日はちゃんと、自分の立ち位置を知ろうとしている目だった。

 舞台の中央に立った桜井蓮が、手元の台本を閉じる。

「今日、仮の配役を発表する」

 その一言で、空気がぴんと張る。

「昨日の特訓を見て、役の再配置を決めた」

 蓮の声はいつも通り落ち着いている。なのに、聞いているだけで緊張するのは、彼の言葉に一切の迷いがないからだ。

「まず、相手役候補は白峰奏斗」

「えっ」

「うそ」

「まじで?」

 ざわっと空気が揺れた。

 当の白峰くんは、いちばん後ろで目を見開いたまま固まっている。

「ちょ、ちょっと待って」

「待たない」

「いや待ってって!」

 思わず前に出た白峰くんの声が少し裏返る。

「俺が相手役とか無理だから!」

「昨日の時点で、無理かどうかはこれから決めると言ったはずだ」

「言ってたけど! でもほんとにやるとは思わないだろ!」

「やる」

 ぴしゃりと返されて、白峰くんが言葉を失う。

 そのとき、小春がぱっと手を挙げた。

「はい!」

「なんだ」

「わたし、それ賛成!」

 小春が笑顔で言うと、白峰くんがぎょっとした顔で振り向いた。

「いや、白雪さんは軽く言うけど!」

「軽くないよ」

 小春はすぐに首を振る。

「奏斗くんの声、本当にすごくいいもん。あれはちゃんと武器になる」

「でも、俺……」

「大丈夫」

 小春はまっすぐ白峰くんを見る。

「わたしが絶対、輝かせるから」
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