落ちこぼれ芸能科ですが、演技の天才ヒロインが舞台で全員勝たせます。
「自分が天才だからって、みんなも変えられると思ってるの?」

「レイナ」

 蓮が低く名前を呼ぶ。

 けれど、レイナは止まらなかった。

「だってそうでしょ」

 まっすぐ小春を見据える視線は、鋭い。

「昨日だって、たまたまうまくいっただけかもしれない」

「……」

「なのに、みんなを勝たせるとか、全員を輝かせるとか、そんなの」

 そこでレイナは少しだけ唇をかむ。

「期待させるだけ期待させて、できなかったらどうするの」

 その言葉に、小春は息を止めた。

 怒っているだけじゃない。
 この子は、怖いのだ。

 期待することが。
 信じて裏切られることが。

 たぶん、その経験がある。

「黒宮さん」

「何」

「……怖いんだね」

 レイナの顔が、ぴしっとこわばった。

「は?」

「期待するのが」

「勝手なこと言わないで」

「ごめん。でも」

 小春は舞台の中央から、一歩だけレイナに近づく。

「わたしも、絶対できるなんて保証はないよ」

 みんなが黙って聞いている。
 蓮の視線も感じる。けれど今は、レイナから目をそらしたくなかった。

「失敗するかもしれない」

「……」

「思ったみたいにうまくいかないことも、あるかもしれない」

「だったら」

「でも、それでもやりたいの」

 小春ははっきり言った。

「だって、最初から無理だって決めたら、ほんとにそこで終わるから」

 レイナの目が揺れる。

「わたしは、それが悔しい」

「……」

「みんな、ちゃんと光るもの持ってるのに、自分で消そうとしてるのが悔しい」

 言いながら、小春はレイナを見つめた。

「黒宮さんも」

「私?」

「うん」

 レイナは露骨に眉をひそめる。

「何それ」

「昨日、端でみんなの動き見てたよね」

「見てたけど」

「足でリズム取ってた」

「……っ」

「しかも、すごく正確だった」

 レイナの表情が固まる。

 小春はそのまま続けた。

「ダンス得意でしょ」

「なんで」

「わかるよ」

 小春は少し笑った。

「体の軸がきれいだもん。立ってるだけでわかる」

 劇場の空気が、ざわっと揺れる。

「え、そうなの?」

「黒宮、ダンスできるの?」

「たしかに姿勢やばいくらいきれいだけど」

 周りの声に、レイナは気まずそうに視線をそらした。
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