落ちこぼれ芸能科ですが、演技の天才ヒロインが舞台で全員勝たせます。
「一ノ瀬に乗せられて、あんな演技までして」

「でも、逃げたくなかったから」

「だからって限度がある」

 ぴしゃりと言われて、小春は少しだけ唇を引き結んだ。

「……そんなに、だめだった?」

「だめだったかどうかの話じゃない」

 蓮は小春のすぐ前で止まる。

「おまえ、自分がどんな顔してたかわかってないだろ」

「どんな顔」

「消えそうな顔だ」

 その言葉に、息が止まる。

 思ってもいなかった表現だった。
 でも、なぜか胸の奥に真っ直ぐ刺さる。

「今にもどこかへ落ちていきそうで」

 蓮の声は低いままなのに、少しかすれて聞こえた。

「見ていられなかった」

 小春は目を瞬く。

 怒っているんじゃない。
 この人は、怖かったのだ。

 自分が。

「蓮くん」

「おまえ、平気な顔して無茶をする」

「……」

「ひとりで立てるって言いながら、ぎりぎりまで抱えこむ」

 蓮の言葉は、まるで見透かすみたいにまっすぐだった。
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