落ちこぼれ芸能科ですが、演技の天才ヒロインが舞台で全員勝たせます。
きれいに巻かれた長い髪。
 すっと伸びた背筋。
 華やかなのに、近寄りがたい空気。

 さすがA組の主演候補、という感じの存在感だった。

「香坂さん」

「名前、覚えてたんだ」

「うん。もちろん」

 小春がそう答えると、ルミナは少しだけ目を細めた。

「余裕あるのね」

「え?」

「昨日、カイにあんなふうに言われたのに」

 その名前が出た瞬間、小春の背筋がわずかにこわばる。

 でも、目はそらさない。

「何か用?」

「単刀直入に言うわ」

 ルミナは小春の前まで歩いてくる。

 ヒールのないローファーの足音なのに、なぜかやけに鋭く響いた。

「あなた、カイに近づかないで」

「……え?」

 一瞬、意味がわからなかった。

「近づかないでって」

「そのままの意味よ」

 ルミナの目はまっすぐだった。

「昨日から見てればわかる。カイ、あなたに興味を持ってる」

「それは」

「気づいてないふりしないで」

 ぴしゃりと言われて、小春は言葉を失う。

 たしかに、一ノ瀬が自分を見ているのはわかる。
 でもそれは恋愛とか、そういうものじゃないと思っていた。
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