落ちこぼれ芸能科ですが、演技の天才ヒロインが舞台で全員勝たせます。
ただ、演技に興味を持たれているだけ。
 たぶん。

「別に、わたしは」

「あなたがどう思ってるかは関係ないの」

 ルミナは冷たく言った。

「カイの視線を集めるのは、私であるべきだから」

 小春は目を瞬く。

 その言葉の中にある感情は、すごくわかりやすかった。

 好きなんだ。
 香坂さんは、一ノ瀬くんのことが。

「……香坂さんって、一ノ瀬くんのこと」

「好きよ」

 迷いなく返ってきて、小春は少し驚いた。

 こんなにはっきり言えるんだ。

 ルミナは小春の反応なんて気にもとめず続ける。

「ずっと見てきた」

「……」

「努力して、実力をつけて、隣に立てるように頑張ってきた」

 その声には誇りがあった。
 ただかわいいとか、ただ好きとか、そういう軽いものじゃない。

「だから、急に出てきたあなたに乱されたくないの」

「乱すつもりなんてないよ」

「でも実際、乱れてる」

 ルミナの表情が少しだけ険しくなる。

「昨日だってそう。あんなふうに感情を引っ張る演技、カイが気にしないわけない」

 小春はぎゅっと台本を抱えなおした。

「……それでも、わたしはわたしの舞台をやるだけだよ」

「強気なのね」

「強気っていうか」

 小春はまっすぐルミナを見た。

「誰かに興味を持たれるかどうかのために、演じてるわけじゃないから」

 その言葉に、ルミナの目が少しだけ鋭くなる。

「つまり、私がくだらないことで必死になってるって言いたいの?」

「違う」

 小春はすぐに首を振る。

「香坂さんが一ノ瀬くんを大事に思ってるのは、ちゃんと伝わったよ」

「……」

「でも、それとわたしが舞台に立つことは別だから」

 数秒の沈黙。

 廊下の窓から入る風が、ふたりの髪を揺らした。

 ルミナはしばらく小春を見つめていたけれど、やがて小さく息をついた。

「ほんと、気に入らない」

「ええっ」

「そういうまっすぐなとこ」

 冷たい言い方なのに、声の底には少しだけ別の響きがあった。
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