落ちこぼれ芸能科ですが、演技の天才ヒロインが舞台で全員勝たせます。
「蓮くん?」

「なんでもない」

「なんでもなくない顔してる」

「おまえ、最近そういうの増えたな」

「だって前よりわかるようになってきたもん」

 小春がちょっとだけ得意げに言うと、蓮は小さくため息をついた。

「余計なところで鋭い」

「余計じゃないよ」

「余計だ」

「そうかな」

 言いながら小春が笑うと、蓮は一瞬だけ言葉を止めた。

「……そうやってすぐ笑うの、反則だろ」

「え?」

「いや」

 蓮は視線をそらす。

「何でもない」

「またそれ」

「本当に何でもない」

 でも耳が少し赤い。

 それを見つけた瞬間、小春の胸がまたくすぐったくなる。

「蓮くん」

「なんだ」

「もしかして、ちょっと気にしてた?」

「何を」

「香坂さんに、一ノ瀬くんのことで話しかけられてたの」

「……」

 沈黙。

 その沈黙だけで、ほとんど答えみたいなものだった。

「気にしてたんだ」

「してない」

「うそ」

「うそじゃない」

「でも今、間があったよ」

「考えてただけだ」

「何を?」

「……」

 蓮はしばらく黙ったあと、観念したみたいに言った。

「おまえが変なことに巻きこまれてないか」

「それだけ?」

「それだけだ」

 即答。

 でも、その目はちょっとだけ不機嫌そうだった。

 小春はじっとその顔を見つめる。

「……蓮くんって」

「何だ」

「やっぱりちょっと嫉妬するよね」

「しない」

「するよ」

「しない」

「するって顔してる」

「おまえな」

 蓮が一歩近づく。
 その距離に、小春の心臓がどきっと跳ねた。

「そんなこと言ってると」

「言ってると?」

 小春が見上げると、蓮は少しかがむようにして目線を合わせてくる。

「あとで後悔するぞ」

「えっ」

 低い声。
 近い距離。
 まっすぐな目。

 その全部が急にずるい。

「こ、後悔ってなに」

「さあな」

「えぇ!?」

「自分で考えろ」

「そんなの考えたら余計気になるよ!」

「なら言うな」

「むりだよ……」

 小さくこぼすと、蓮はほんの少しだけ口元をゆるめた。
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