君のいない明日を、今日。
なんとなく
――愛
「や、やだ……!!!」
叫んだ瞬間。
身体が、大きく跳ねた。
「……っ!」
目を開ける。
「……はぁ……はぁ……」
心臓が、激しく鳴っていた。
夢……?
「……夢……だったの?」
長い夢を見ていた気がする。
すごく長くて。
悲しくて。
大切な何かを、必死に掴もうとしていたような――
でも。
思い出せない。
「愛ー。そろそろ起きたほうがいいんじゃない?」
下から、お母さんの声が聞こえた。
「あ、うん! 分かってるー!」
返事をしながら、携帯を見る。
「……あれ?」
アラームが止まっている。
どうやら、無意識のうちに止めていたらしい。
「やば……」
急いでベッドから起き上がる。
制服に着替えて、リビングへ降りる。
「お母さん、今日仕事遅いの?」
そう言うと。
「何寝ぼけてんの!」
お母さんが笑う。
「そんなボサボサの髪でいいの!?」
「えっ」
慌てて髪を触る。
「……あ、そっか!」
鏡を見る。
寝癖がひどい。
「やばいやばい!」
そこからはもう、時間との勝負だった。
顔を洗って。
髪を整えて。
朝ごはんを食べて。
時計を見る。
「……やばっ!」
慌てて鞄を持ち、玄関へ向かう。
春の日差しが、リビングに差し込んでいた。
いつもと変わらない朝。
何も変わらない。
……はずなのに。
玄関へ向かう途中。
ふと。
視界の端に何かが映った。
「……ん?」
折りたたみ傘。
なぜか。
妙に気になった。
手に取る。
「今日、晴れるんだっけ?」
窓の外を見る。
空は明るい。
雨なんて降りそうにない。
「……持ってかなくていいや」
そう呟いて。
傘を元の場所へ戻す。
そして。
そのまま家を出た。
――
家の近くにある、古びた神社。
いつもなら素通りする場所なのに。
今日は、なぜか足が止まった。
「……」
理由は分からない。
でも。
なんとなく。
軽く手を合わせる。
「今日も一日、元気で過ごせますように!」
それだけ言って、神社をあとにする。
――
「田中さん、おはよー!!」
通学路で、田中さんに声をかける。
「おお、愛ちゃん。おはよう」
その顔を見た瞬間。
また。
何かが引っかかった。
「……あのさ」
「ん?」
「薬、飲んだ?」
「えぇ?」
田中さんが目を丸くする。
「飲んだよ!」
「そっか」
なぜか、ほっとした。
「なんだい。気にかけてくれてるのかい。ありがとねぇ」
「ううん!」
笑って首を振る。
「ならいいの!! なんとなく、ね!」
「なんとなく?」
「うん!」
自分でもよく分からない。
ただ。
聞かなきゃいけない気がした。
――
「おはよ!!」
後ろから声がする。
振り返る。
「りほ!」
「はぁ……はぁ……」
りほは息を切らしながら走ってきた。
「……あー!」
思わず声が出る。
「もう、寝癖!!」
「えっ!?」
りほが慌てて髪を触る。
「また寝坊したの?」
「ちょっとだけ!」
「忘れ物ない??」
「ないよ!」
「体操服とか!!」
「え?」
りほが首を傾げる。
「体操服? なんで?」
「……」
なんでだろう。
「なんとなく、ね!」
「なにそれー!」
りほが笑う。
「ないない! ちゃんと確認したもん! ほら!」
鞄を開けて見せてくる。
「バッチリ!」
「やるじゃん!」
二人で笑いながら、学校へ向かう。
――
昇降口に着いた。
靴を履き替えながら。
ふと。
何かを忘れている気がした。
「……」
でも。
何を忘れているのか。
思い出せない。
「……なんだろ」
頭の中を探してみる。
でも。
何も出てこない。
「何ぼーっとしてんの?」
りほに声をかけられた。
「……え?」
「さっきからずっとぼーっとしてるよ?」
「ううん」
私は笑った。
「なんとなく、ね」
そう答えて。
そのまま教室へ向かった。
胸の奥に残った。
小さな違和感だけを置き去りにして。
「や、やだ……!!!」
叫んだ瞬間。
身体が、大きく跳ねた。
「……っ!」
目を開ける。
「……はぁ……はぁ……」
心臓が、激しく鳴っていた。
夢……?
「……夢……だったの?」
長い夢を見ていた気がする。
すごく長くて。
悲しくて。
大切な何かを、必死に掴もうとしていたような――
でも。
思い出せない。
「愛ー。そろそろ起きたほうがいいんじゃない?」
下から、お母さんの声が聞こえた。
「あ、うん! 分かってるー!」
返事をしながら、携帯を見る。
「……あれ?」
アラームが止まっている。
どうやら、無意識のうちに止めていたらしい。
「やば……」
急いでベッドから起き上がる。
制服に着替えて、リビングへ降りる。
「お母さん、今日仕事遅いの?」
そう言うと。
「何寝ぼけてんの!」
お母さんが笑う。
「そんなボサボサの髪でいいの!?」
「えっ」
慌てて髪を触る。
「……あ、そっか!」
鏡を見る。
寝癖がひどい。
「やばいやばい!」
そこからはもう、時間との勝負だった。
顔を洗って。
髪を整えて。
朝ごはんを食べて。
時計を見る。
「……やばっ!」
慌てて鞄を持ち、玄関へ向かう。
春の日差しが、リビングに差し込んでいた。
いつもと変わらない朝。
何も変わらない。
……はずなのに。
玄関へ向かう途中。
ふと。
視界の端に何かが映った。
「……ん?」
折りたたみ傘。
なぜか。
妙に気になった。
手に取る。
「今日、晴れるんだっけ?」
窓の外を見る。
空は明るい。
雨なんて降りそうにない。
「……持ってかなくていいや」
そう呟いて。
傘を元の場所へ戻す。
そして。
そのまま家を出た。
――
家の近くにある、古びた神社。
いつもなら素通りする場所なのに。
今日は、なぜか足が止まった。
「……」
理由は分からない。
でも。
なんとなく。
軽く手を合わせる。
「今日も一日、元気で過ごせますように!」
それだけ言って、神社をあとにする。
――
「田中さん、おはよー!!」
通学路で、田中さんに声をかける。
「おお、愛ちゃん。おはよう」
その顔を見た瞬間。
また。
何かが引っかかった。
「……あのさ」
「ん?」
「薬、飲んだ?」
「えぇ?」
田中さんが目を丸くする。
「飲んだよ!」
「そっか」
なぜか、ほっとした。
「なんだい。気にかけてくれてるのかい。ありがとねぇ」
「ううん!」
笑って首を振る。
「ならいいの!! なんとなく、ね!」
「なんとなく?」
「うん!」
自分でもよく分からない。
ただ。
聞かなきゃいけない気がした。
――
「おはよ!!」
後ろから声がする。
振り返る。
「りほ!」
「はぁ……はぁ……」
りほは息を切らしながら走ってきた。
「……あー!」
思わず声が出る。
「もう、寝癖!!」
「えっ!?」
りほが慌てて髪を触る。
「また寝坊したの?」
「ちょっとだけ!」
「忘れ物ない??」
「ないよ!」
「体操服とか!!」
「え?」
りほが首を傾げる。
「体操服? なんで?」
「……」
なんでだろう。
「なんとなく、ね!」
「なにそれー!」
りほが笑う。
「ないない! ちゃんと確認したもん! ほら!」
鞄を開けて見せてくる。
「バッチリ!」
「やるじゃん!」
二人で笑いながら、学校へ向かう。
――
昇降口に着いた。
靴を履き替えながら。
ふと。
何かを忘れている気がした。
「……」
でも。
何を忘れているのか。
思い出せない。
「……なんだろ」
頭の中を探してみる。
でも。
何も出てこない。
「何ぼーっとしてんの?」
りほに声をかけられた。
「……え?」
「さっきからずっとぼーっとしてるよ?」
「ううん」
私は笑った。
「なんとなく、ね」
そう答えて。
そのまま教室へ向かった。
胸の奥に残った。
小さな違和感だけを置き去りにして。