君のいない明日を、今日。
5月10日
愛視点
昨日は、雨が降らなかった。
目を覚ました瞬間から、私はずっとそのことが気になっていた。
どうして?
いつもなら――
……何かがおかしい。
何かが、変わってる。
昨日までと、何かが違う。
それは、いい方向に変わったってこと?
ねぇ。
そうだよね?
きっと、そうだよね。
自分に言い聞かせるようにそう思いながら、私は急いで支度をした。
そして、いつもより少し早足で学校へ向かった。
――大丈夫。
今回は、きっと大丈夫。
そう思っていた。
教室に入った瞬間、妙な違和感を覚えた。
いつもより、ざわついている。
クラスメイトたちが、何かを話していた。
「昨日の救急車、やばかったよね?」
「なんか事故だったらしいよ」
「お酒飲んでたんでしょ?」
「え、トラックの運転手が?」
そんな言葉が、耳に入ってくる。
胸の奥が、ドクン、と大きく鳴った。
……嫌な予感がする。
やめて。
お願いだから。
そんなこと、考えたくない。
私は教室を見回した。
でも――
いない。
こうきが、まだ来てない。
いつもなら、もういるはずなのに。
「……こうき?」
名前を呟いた瞬間だった。
急に、息ができなくなった。
空気を吸っているはずなのに、肺に入ってこない。
苦しい。
苦しい、苦しい。
誰かが何かを言っている。
でも、もう何も聞こえなかった。
視界がぐらりと揺れる。
そして――
気づいたときには、私は保健室のベッドに横たわっていた。
真っ白な天井。
ぼんやりする頭。
「……っ」
ハッとして身体を起こす。
それに気づいた保健室の先生が、カーテンを開けた。
「起きた?」
「……うん」
「熱はないね」
先生の声を聞いて、私はすぐに問いかけた。
「こうきは?!」
先生の表情が、ほんの少し曇った。
「あ……」
その一瞬で分かってしまった。
聞きたくない。
でも、聞かなきゃ。
先生はゆっくりと息を吐いた。
「うん……落ち着いて聞いてね」
その言葉だけで、心臓が嫌な音を立てた。
「昨日の夜……酒気帯び運転のトラックに跳ねられて……」
先生の声が遠くなる。
「病院に運ばれたんだけど……」
やめて。
お願い。
聞きたくない。
「……残念ながら」
そこから先は、ほとんど聞こえなかった。
音が消えた。
世界から、私だけが切り離されたみたいだった。
ただ一つだけ。
頭の中に浮かんだ。
――今回も、失敗した。
「……なんで」
声が震えた。
「なんで……」
次から次へと涙が溢れてくる。
「なんで……!!」
私はベッドから飛び降りた。
先生が何か叫んでいる。
でも、もう聞いていられなかった。
私は保健室を飛び出した。
学校を飛び出して。
ただ、走った。
行かなきゃ。
行かなきゃ。
――神社へ。
今回も、また。
何かを間違えた。
だったら――
戻らなきゃ。
こうきを助けなきゃ。
走って、走って、走って。
靴が片方脱げても気にしなかった。
気づけば両方ともなくなっていた。
それでも止まらない。
靴下のまま、地面を踏みしめる。
痛い。
でも、そんなことどうでもよかった。
息が切れる。
胸が苦しい。
それでも走る。
お願い。
お願いだから。
まだ間に合う。
きっと、まだ――。
神社が見えた。
私はそのまま境内へ駆け込み、乱暴に鈴を鳴らした。
ガラン、ガラン、と大きな音が響く。
両手を合わせる。
涙で視界が滲む。
「お願い!!!!」
声が震える。
「戻らなきゃ!!」
何度も何度も頭を下げる。
「こうきを助けなきゃいけないの!!!!」
涙が頬を伝い落ちる。
「お願い……!!」
どうか。
どうか、もう一度だけ。
「お願い……!!」
――今度こそ。
今度こそ、こうきを助けさせて。
昨日は、雨が降らなかった。
目を覚ました瞬間から、私はずっとそのことが気になっていた。
どうして?
いつもなら――
……何かがおかしい。
何かが、変わってる。
昨日までと、何かが違う。
それは、いい方向に変わったってこと?
ねぇ。
そうだよね?
きっと、そうだよね。
自分に言い聞かせるようにそう思いながら、私は急いで支度をした。
そして、いつもより少し早足で学校へ向かった。
――大丈夫。
今回は、きっと大丈夫。
そう思っていた。
教室に入った瞬間、妙な違和感を覚えた。
いつもより、ざわついている。
クラスメイトたちが、何かを話していた。
「昨日の救急車、やばかったよね?」
「なんか事故だったらしいよ」
「お酒飲んでたんでしょ?」
「え、トラックの運転手が?」
そんな言葉が、耳に入ってくる。
胸の奥が、ドクン、と大きく鳴った。
……嫌な予感がする。
やめて。
お願いだから。
そんなこと、考えたくない。
私は教室を見回した。
でも――
いない。
こうきが、まだ来てない。
いつもなら、もういるはずなのに。
「……こうき?」
名前を呟いた瞬間だった。
急に、息ができなくなった。
空気を吸っているはずなのに、肺に入ってこない。
苦しい。
苦しい、苦しい。
誰かが何かを言っている。
でも、もう何も聞こえなかった。
視界がぐらりと揺れる。
そして――
気づいたときには、私は保健室のベッドに横たわっていた。
真っ白な天井。
ぼんやりする頭。
「……っ」
ハッとして身体を起こす。
それに気づいた保健室の先生が、カーテンを開けた。
「起きた?」
「……うん」
「熱はないね」
先生の声を聞いて、私はすぐに問いかけた。
「こうきは?!」
先生の表情が、ほんの少し曇った。
「あ……」
その一瞬で分かってしまった。
聞きたくない。
でも、聞かなきゃ。
先生はゆっくりと息を吐いた。
「うん……落ち着いて聞いてね」
その言葉だけで、心臓が嫌な音を立てた。
「昨日の夜……酒気帯び運転のトラックに跳ねられて……」
先生の声が遠くなる。
「病院に運ばれたんだけど……」
やめて。
お願い。
聞きたくない。
「……残念ながら」
そこから先は、ほとんど聞こえなかった。
音が消えた。
世界から、私だけが切り離されたみたいだった。
ただ一つだけ。
頭の中に浮かんだ。
――今回も、失敗した。
「……なんで」
声が震えた。
「なんで……」
次から次へと涙が溢れてくる。
「なんで……!!」
私はベッドから飛び降りた。
先生が何か叫んでいる。
でも、もう聞いていられなかった。
私は保健室を飛び出した。
学校を飛び出して。
ただ、走った。
行かなきゃ。
行かなきゃ。
――神社へ。
今回も、また。
何かを間違えた。
だったら――
戻らなきゃ。
こうきを助けなきゃ。
走って、走って、走って。
靴が片方脱げても気にしなかった。
気づけば両方ともなくなっていた。
それでも止まらない。
靴下のまま、地面を踏みしめる。
痛い。
でも、そんなことどうでもよかった。
息が切れる。
胸が苦しい。
それでも走る。
お願い。
お願いだから。
まだ間に合う。
きっと、まだ――。
神社が見えた。
私はそのまま境内へ駆け込み、乱暴に鈴を鳴らした。
ガラン、ガラン、と大きな音が響く。
両手を合わせる。
涙で視界が滲む。
「お願い!!!!」
声が震える。
「戻らなきゃ!!」
何度も何度も頭を下げる。
「こうきを助けなきゃいけないの!!!!」
涙が頬を伝い落ちる。
「お願い……!!」
どうか。
どうか、もう一度だけ。
「お願い……!!」
――今度こそ。
今度こそ、こうきを助けさせて。