魔法より、君に恋をする。
王都の休日は、平日とは比べものにならないほど賑やかだった。

 大通りには露店が並び、焼き菓子や花の香りが風に混じる。学院の制服姿もちらほら見えるものの、家族連れや恋人同士の方が多い。

「こっち」

 セシルに手を引かれ、細い通りへ入る。

「今日は迷わないね」

「私が案内してるからね」

「昨日は四階にいました」

「何の話?」

「二階に行こうとして四階に行った」

「……どうやったの?」

「階段があったから上った」

「リリア、階段って見つけたら上らなきゃいけないものじゃないんだよ」

「昨日も言われた」

「誰に?」

「クロフォード先輩」

 セシルがちらりとこちらを見る。

「昨日、一緒だったんだ?」

「途中で拾われた」

「拾われた」

「第三資料室まで連れていってくれた。そのあと生徒会室も行って、帰りも途中まで一緒」

「へえ」

「猫もいた」

「猫?」

「クロフォード先輩が餌あげてる猫」

「……意外」

「でしょ?」

 リリアは少し楽しそうに笑った。

「だからお土産買おうと思ってる」

「クロフォード先輩に?」

「うん。何でもいいって言われた」

「一番困るやつだね」

「そうなの」

「じゃあ一緒に選ぼうか」

「いいの?」

「もちろん」

 あまりにも自然な返事だった。

 リリアは少しだけセシルの横顔を見る。

「セシルって嫉妬しないの?」

「……急だね」

「昨日クロフォード先輩にアレンの話したら、ちょっと機嫌悪そうだったから」

「それ本人に言った?」

「言った。違うって言われた」

「だろうね」

「セシルは?」

 セシルは少し考えた。

「するよ」

「するんだ」

「私だってする」

「誰に?」

 その問いには、さすがにすぐ答えられなかった。

 繋いだ手を見る。

「……秘密」

「また秘密」

「リリアの周り、秘密多いね」

「本当にそう」

「でも、これはいつかちゃんと話すよ」

「いつ?」

「言える時が来たら」

「みんなそれ言う」

「私はちゃんと言うから」

 リリアはセシルを見上げた。

「約束?」

「約束」

 指先が少し強く重なる。

 リリアはそれ以上聞かなかった。
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