魔法より、君に恋をする。

第十八章 六人のいる月曜日

休日が終わった。

 月曜日の朝、リリアはいつもより少し早く教室へ着いた。

「……珍しい」

 教室に入った瞬間、ノアが言った。

「おはようより先にそれ?」

「おはよう、リリア。珍しいね」

「言い直しても失礼」

 リリアは鞄を机へ置いた。

「今日は迷わなかった」

「えらい」

「子ども扱いしないで」

「じゃあ、どうして早いの?」

「昨日いっぱい歩いたから、早く寝た」

「ああ」

 ノアが意味ありげに笑う。

「楽しかった?」

「うん」

 即答した。

「すごく」

「そっか」

 ノアの笑顔は変わらなかった。

 けれど、ほんの少しだけ目が細くなる。

「セシルと何したの?」

「買い物して、ご飯食べて、服見て、丘に行った」

「へえ。ちゃんとデートしてる」

「デート?」

 リリアは首を傾げる。

「友達と二人で遊んだだけだけど」

「本人にそれ言わない方がいいよ」

「なんで?」

「僕が殺されるから」

「セシルはそんなことしない」

「そういう意味じゃないんだけどなあ」

 その時、教室の扉が開いた。

「おはよう、リリア」

「おはよう、セシル」

 振り返ったリリアが笑う。

 セシルは一瞬だけ足を止めた。

「……朝から機嫌いいね」

「昨日楽しかったから」

「っ」

 ノアが机に肘をつき、頬杖をついた。

「僕、今ちょっと帰りたい」

「来たばっかりでしょ」

「精神的に疲れた」

「寝不足?」

「君のせい」

「私、昨日ノアと会ってない」

「そこから説明しないとだめかあ」

 セシルが小さく笑った。

「ノア、頑張って」

「他人事みたいに言うけど、君も相当だよ」

「何が?」

「似た者同士だなあって」

「私とセシル?」

「そこじゃない」

 二人揃って首を傾げる。

 ノアはとうとう机へ突っ伏した。

「もういい」

「朝から変」

「誰のせいだと思ってるの」

 リリアは答えず、鞄の中を探った。

「あ、セシル」

「うん?」

「昨日の栞、使った?」

「使ったよ」

「早い」

「昨日帰ってから本に挟んだ」

「見せて」

 セシルは鞄から一冊の本を取り出した。

 銀色の小さな剣を模した栞が、ページの間から覗いている。

「ちゃんと使ってる」

「約束したからね」

「大事に使うって」

「うん」

「なくさないでね」

「なくさないよ」

 セシルは栞に指を触れた。

「絶対に」

 その言い方が思ったより真剣で、リリアは少しだけ目を瞬いた。

 けれど、嫌ではなかった。
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