魔法より、君に恋をする。

第十九章 春季実戦祭

翌日の昼休み。

「じゃあ、行ってきます」

 リリアが席を立つと、セシルが弁当箱を開けながら顔を上げた。

「今日はルシアン先輩と食べるんだっけ?」

「うん。昨日約束した」

「どこで?」

「聞いてない」

「……大丈夫?」

「何が?」

「辿り着ける?」

「迎えに来るって」

「なら大丈夫だね」

 あっさり納得されてしまった。

「最近、私への信用なくない?」

「方向感覚に関しては最初からないよ」

「ひどい」

「リリア自身は信用してる」

「ならいい」

「いいんだ」

 ノアが隣で笑う。

「ところでさ」

「何?」

「僕には?」

「何が?」

「二人でご飯食べる予定」

 リリアは少し考える。

「今食べてるでしょ?」

「セシルもいるじゃん」

「嫌なの?」

「嫌じゃないよ。ただ、たまには僕も特別扱いしてほしいなって」

「ノアは毎日いるから」

「……」

 ノアが黙った。

「何?」

「それ、結構強いこと言ってるって分かってる?」

「毎日いるでしょ?」

「いるけど」

「じゃあ合ってる」

「そうなんだけどなあ」

 困ったように笑いながら、それでもノアは少し嬉しそうだった。

「じゃあ今度、二人で食べようよ」

「いいよ」

「やった」

「苺あるところがいい」

「僕との時間より苺優先?」

「両方」

「なら許す」

 その時、教室の扉が軽く叩かれた。

 何人かの生徒が一斉にそちらを見る。

「リリア」

 扉のところに立っていたのはルシアンだった。

 三年生の深紅の学年章。

 そして生徒会長。

 ただ迎えに来ただけなのに、一年生の教室が妙に静かになる。

「迎えに来たよ」

「ありがとうございます」

 リリアは鞄から財布を取り出した。

 後ろで女子生徒たちが小声で何か話している。

 最近、この程度では気にならなくなった。

「行ってきます」

「いってらっしゃい」

 セシルが手を振る。

「迷子にしないでくださいね、会長」

 ノアが言う。

「僕がいるのに?」

「リリアなら可能性あります」

「ノア」

「何?」

「あとで覚えてて」

「怖いなあ」

 笑うノアを置いて、リリアは教室を出た。
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