魔法より、君に恋をする。
日が落ちた演習場には、ルシアンだけが残っていた。

 六体目が現れた場所に膝をつき、表面の土を払う。

 訓練用術式の下に、ごく薄い魔力痕が残っていた。

「……これは」

 指先に魔力を集める。

 古い線が浮かび上がった。

 一本。

 二本。

 さらに土を払う。

 中心から外へ向かって伸びる細い線。

 数えるまでもない。

 最近、何度も見た形だった。

「十二本」

 黒い石。

 古い本。

 そして、演習場。

 偶然という言葉では、もう片づけられない。

 ルシアンが中央へ指を触れた。

 術式が淡く光る。

 その瞬間。

 十二本の外側に、もう一本。

 存在しないはずの線が浮かび上がった。

「――十三?」

 瞬きをする間に消える。

 ルシアンはしばらく動かなかった。

 昨日、リリアが口にした言葉が蘇る。

『十二回』

 そして今。

 十三本目。

「……困ったな」

 いつもの軽さは、その声にはなかった。

 何かが動き始めている。

 それだけは、もう間違いなかった。

 けれど今度は、一人で答えを抱え込むつもりはない。

 明日、確認できたことは話す。

 そう約束した。

 ルシアンは立ち上がり、消えた十三本目の線をもう一度見下ろした。

 春季実戦祭まで、あと九日。
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