魔法より、君に恋をする。
第二十一章 十三本目の線
翌朝。
「眠い」
リリアは机に頬をつけたまま呟いた。
「珍しいね」
隣からセシルの声がする。
「昨日、早く寝なかったの?」
「寝た」
「何時?」
「十一時」
「普通だね」
「でも眠い」
「じゃあ朝ご飯は?」
「食べた」
「体調悪い?」
「元気」
「ただ眠いだけかあ」
「うん」
セシルが困ったように笑い、リリアの銀髪を一房だけ指先で避けた。机と頬の間に挟まっていたらしい。
「一限、魔法史だよ。寝ないでね」
「頑張る」
「自信なさそう」
「魔法史、先生の声が眠い」
「先生に聞かれたら怒られるよ」
「大丈夫。いない」
「そういう問題じゃないかな」
反対側の席では、ノアが教科書を開いていた。
「僕、起こしてあげようか?」
「どうやって?」
「耳元で愛を囁く」
「セシルに頼む」
「即答!?」
「セシルなら普通に起こしてくれそう」
「起こすよ」
「ほら」
「僕だって普通にも起こせるよ」
「最初からそう言って」
ノアが不満そうに頬杖をついた。
「リリアって、僕の扱いだけ雑じゃない?」
「同級生だから」
「セシルも同級生だよ」
「ノアだから」
「それ理由になってる?」
「なってる」
「ひどいなあ」
そう言いながら笑っているので、本気で嫌がってはいないのだろう。
リリアは目を閉じかけて、ふと思い出した。
「そういえば」
「うん?」
「昨日の六体目、どうなったかな」
ノアの指が止まった。
セシルもリリアを見る。
「ルシアン先輩が調べるって言ってたやつ?」
「うん。今日話してくれるって」
「合同訓練の時かな」
「たぶん」
「気になる?」
「気になる」
リリアはようやく身体を起こした。
「普通の魔法獣とちょっと違ったから」
「違った?」
セシルが聞く。
「魔力の感じ。出てくる前から分かった」
「それは昨日も言ってたね」
「うん。でも、何ていうか……」
言葉を探す。
「新しく作られた感じがしなかった」
「どういう意味?」
「分からない」
「そこは分からないんだ」
「感覚だから」
ノアが教科書を閉じた。
「古かった?」
「それとも違う」
「じゃあ、懐かしい?」
リリアはノアを見た。
青い瞳がこちらを見ている。
「……懐かしい?」
「例えばね」
「分からない」
少し考えてみる。
懐かしい。
そう言われると、何かが胸の奥に引っかかった。
けれど、それが何なのかは掴めない。
「嫌な感じはした」
「そっか」
ノアはそれ以上聞かなかった。
ちょうど教師が入ってきて、教室のざわめきが収まる。
リリアは前を向いた。
その横でノアが一瞬だけ伏せた目を、リリアは見ていなかった。
「眠い」
リリアは机に頬をつけたまま呟いた。
「珍しいね」
隣からセシルの声がする。
「昨日、早く寝なかったの?」
「寝た」
「何時?」
「十一時」
「普通だね」
「でも眠い」
「じゃあ朝ご飯は?」
「食べた」
「体調悪い?」
「元気」
「ただ眠いだけかあ」
「うん」
セシルが困ったように笑い、リリアの銀髪を一房だけ指先で避けた。机と頬の間に挟まっていたらしい。
「一限、魔法史だよ。寝ないでね」
「頑張る」
「自信なさそう」
「魔法史、先生の声が眠い」
「先生に聞かれたら怒られるよ」
「大丈夫。いない」
「そういう問題じゃないかな」
反対側の席では、ノアが教科書を開いていた。
「僕、起こしてあげようか?」
「どうやって?」
「耳元で愛を囁く」
「セシルに頼む」
「即答!?」
「セシルなら普通に起こしてくれそう」
「起こすよ」
「ほら」
「僕だって普通にも起こせるよ」
「最初からそう言って」
ノアが不満そうに頬杖をついた。
「リリアって、僕の扱いだけ雑じゃない?」
「同級生だから」
「セシルも同級生だよ」
「ノアだから」
「それ理由になってる?」
「なってる」
「ひどいなあ」
そう言いながら笑っているので、本気で嫌がってはいないのだろう。
リリアは目を閉じかけて、ふと思い出した。
「そういえば」
「うん?」
「昨日の六体目、どうなったかな」
ノアの指が止まった。
セシルもリリアを見る。
「ルシアン先輩が調べるって言ってたやつ?」
「うん。今日話してくれるって」
「合同訓練の時かな」
「たぶん」
「気になる?」
「気になる」
リリアはようやく身体を起こした。
「普通の魔法獣とちょっと違ったから」
「違った?」
セシルが聞く。
「魔力の感じ。出てくる前から分かった」
「それは昨日も言ってたね」
「うん。でも、何ていうか……」
言葉を探す。
「新しく作られた感じがしなかった」
「どういう意味?」
「分からない」
「そこは分からないんだ」
「感覚だから」
ノアが教科書を閉じた。
「古かった?」
「それとも違う」
「じゃあ、懐かしい?」
リリアはノアを見た。
青い瞳がこちらを見ている。
「……懐かしい?」
「例えばね」
「分からない」
少し考えてみる。
懐かしい。
そう言われると、何かが胸の奥に引っかかった。
けれど、それが何なのかは掴めない。
「嫌な感じはした」
「そっか」
ノアはそれ以上聞かなかった。
ちょうど教師が入ってきて、教室のざわめきが収まる。
リリアは前を向いた。
その横でノアが一瞬だけ伏せた目を、リリアは見ていなかった。