魔法より、君に恋をする。
第二十五章 怖い先輩と甘いもの
春季実戦祭まで、あと五日。
学院全体が、目に見えて騒がしくなっていた。
廊下には部隊表が貼り出され、演習場は朝から夕方まで予約で埋まり、食堂ではどの部隊が強いだの、誰と誰の相性がいいだの、そんな話ばかりが飛び交っている。
第十三部隊も例外ではない。
むしろ、例外どころか。
「また見られてる」
昼休み。
食堂の中央で、リリアはスープを飲みながら言った。
「そりゃ見るでしょ」
向かいのノアがパンをちぎる。
「第十三部隊、優勝候補扱いされてるから」
「まだ一回も戦ってない」
「期待ってそういうものだよ」
「嫌だ」
「注目されるの?」
「うん」
「入学式からずっと注目されてるのに?」
「慣れない」
「美人も大変だねえ」
「ノアも見られてる」
「僕は歓迎」
「違いが分からない」
隣でセシルが笑った。
「リリアは自分に向けられる視線を気にしないようで、意外と気にするよね」
「見られる理由が分からない時が嫌」
「今は分かる?」
「実戦祭」
「じゃあ平気?」
「ちょっと嫌」
「結局嫌なんだ」
セシルが楽しそうに笑う。
その時、食堂の入口がざわついた。
「今度は何?」
リリアが顔を上げる。
黒髪。
深紅の学年色。
長身。
カイルだった。
「クロフォード先輩」
呼ぶと、彼はすぐにこちらを見た。
そして真っ直ぐ歩いてくる。
周囲がさりげなく道を空けた。
「怖がられてる」
リリアが言う。
「聞こえてる」
「本当のこと」
「お前はもう少し声量を考えろ」
「普通に喋った」
「普通でそれか」
カイルは呆れたように息を吐いた。
「何しに来たの?」
「お前に用がある」
「私?」
「ああ」
ノアがにっこり笑う。
「何の用ですか、カイル先輩」
「なぜお前が聞く」
「気になるから」
「関係ない」
「冷たいなあ」
カイルはノアを完全に無視し、リリアを見る。
「放課後、時間はあるか」
「合同訓練までなら」
「一時間程度でいい」
「何するの?」
「前に言っただろ」
リリアは考える。
「猫?」
「違う」
「訓練?」
「違う」
「何?」
カイルの眉間に皺が寄る。
「甘いもの」
「あ」
思い出した。
「食べる約束」
「そうだ」
「行く」
即答すると、カイルが一瞬だけ黙った。
「……そうか」
「忘れてた?」
「忘れてない」
「じゃあなんで驚いたの?」
「驚いてない」
「今ちょっと止まった」
「気のせいだ」
ノアが机に頬杖をつく。
「へえ。二人で甘いもの」
「ノアも昨日食べたでしょ」
「そうだけど」
「じゃあいいじゃん」
「そういう問題かなあ」
「違うの?」
「……いや、もういいや」
セシルがノアの肩を軽く叩いた。
「頑張って」
「何を?」
「色々」
「セシルまでそっち側?」
「どっち側かは分からないけど」
リリアは二人を見た。
「変なの」
「リリアが言う?」
声が揃った。
学院全体が、目に見えて騒がしくなっていた。
廊下には部隊表が貼り出され、演習場は朝から夕方まで予約で埋まり、食堂ではどの部隊が強いだの、誰と誰の相性がいいだの、そんな話ばかりが飛び交っている。
第十三部隊も例外ではない。
むしろ、例外どころか。
「また見られてる」
昼休み。
食堂の中央で、リリアはスープを飲みながら言った。
「そりゃ見るでしょ」
向かいのノアがパンをちぎる。
「第十三部隊、優勝候補扱いされてるから」
「まだ一回も戦ってない」
「期待ってそういうものだよ」
「嫌だ」
「注目されるの?」
「うん」
「入学式からずっと注目されてるのに?」
「慣れない」
「美人も大変だねえ」
「ノアも見られてる」
「僕は歓迎」
「違いが分からない」
隣でセシルが笑った。
「リリアは自分に向けられる視線を気にしないようで、意外と気にするよね」
「見られる理由が分からない時が嫌」
「今は分かる?」
「実戦祭」
「じゃあ平気?」
「ちょっと嫌」
「結局嫌なんだ」
セシルが楽しそうに笑う。
その時、食堂の入口がざわついた。
「今度は何?」
リリアが顔を上げる。
黒髪。
深紅の学年色。
長身。
カイルだった。
「クロフォード先輩」
呼ぶと、彼はすぐにこちらを見た。
そして真っ直ぐ歩いてくる。
周囲がさりげなく道を空けた。
「怖がられてる」
リリアが言う。
「聞こえてる」
「本当のこと」
「お前はもう少し声量を考えろ」
「普通に喋った」
「普通でそれか」
カイルは呆れたように息を吐いた。
「何しに来たの?」
「お前に用がある」
「私?」
「ああ」
ノアがにっこり笑う。
「何の用ですか、カイル先輩」
「なぜお前が聞く」
「気になるから」
「関係ない」
「冷たいなあ」
カイルはノアを完全に無視し、リリアを見る。
「放課後、時間はあるか」
「合同訓練までなら」
「一時間程度でいい」
「何するの?」
「前に言っただろ」
リリアは考える。
「猫?」
「違う」
「訓練?」
「違う」
「何?」
カイルの眉間に皺が寄る。
「甘いもの」
「あ」
思い出した。
「食べる約束」
「そうだ」
「行く」
即答すると、カイルが一瞬だけ黙った。
「……そうか」
「忘れてた?」
「忘れてない」
「じゃあなんで驚いたの?」
「驚いてない」
「今ちょっと止まった」
「気のせいだ」
ノアが机に頬杖をつく。
「へえ。二人で甘いもの」
「ノアも昨日食べたでしょ」
「そうだけど」
「じゃあいいじゃん」
「そういう問題かなあ」
「違うの?」
「……いや、もういいや」
セシルがノアの肩を軽く叩いた。
「頑張って」
「何を?」
「色々」
「セシルまでそっち側?」
「どっち側かは分からないけど」
リリアは二人を見た。
「変なの」
「リリアが言う?」
声が揃った。