魔法より、君に恋をする。
 その日の訓練が終わったあと。

 リリアは寮へ戻る途中、ふと右手を見た。

 カイルと繋いでいた手。

 もう温もりは残っていない。

 それなのに、何となく覚えている。

「……大きかったな」

 思い出す。

 ノアの手。

 セシルの手。

 アレンの手。

 カイルの手。

 同じ「手を繋ぐ」でも、不思議なくらい違う。

 誰といる時も、嫌ではない。

 むしろ。

 楽しい。

 落ち着く。

 時々、胸が変な音を立てる。

「……恋って難しい」

 ぽつりと呟く。

 まだ分からない。

 誰か一人を選ぶなんて、もっと分からない。

 でも。

 分からないままでいいのかもしれない。

 今はまだ。

 知りたいと思う。

 ノアのことも。

 セシルのことも。

 アレンのことも。

 カイルのことも。

 レオン先輩のことも。

 ルシアン先輩のことも。

 それぞれを。

 もっと。

 その先で、自分の気持ちが何になるのか。

 それは、自分で決めたい。

「……よし」

 顔を上げる。

「まず実戦祭」

 恋より先に。

 勝つ。

 今のリリアにとっては、それが一番分かりやすかった。
< 155 / 284 >

この作品をシェア

pagetop