魔法より、君に恋をする。

第二十七章 春季実戦祭、開幕

 春季実戦祭初日。

 王立高等魔法学院《アルカディア》の中央広場には、朝から全校生徒が集まっていた。

 一年生の白銀、二年生の蒼、三年生の深紅。三つの学年色が入り混じり、広場の周囲には各部隊の旗が並んでいる。

 学院の高い塔から、開幕を告げる鐘が鳴った。

 ざわめきが止まる。

 壇上へ上がった学院長が、全校生徒を見渡した。

「春季実戦祭は、諸君が一年を通して学ぶべきものを、最も早く知るための行事でもある」

 拡声魔法に乗った声が広場へ響く。

「魔法の強さだけでは、人は救えない。剣の腕だけでも、知識だけでも同じだ。状況を見て、考え、仲間を信じ、自ら選択すること。そのすべてを試す三日間になる」

 リリアは第十三部隊の列に立ちながら聞いていた。

 右にセシル。

 左にノア。

 少し前にはアレンとカイル。

 レオンハルトは中央寄り。

 ルシアンは参加生徒とは別の、監督生用の深紫の腕章をつけて後方に立っている。

「緊張してる?」

 ノアが小声で聞いた。

「してない」

「即答だ」

「楽しみ」

「だと思った」

 反対側からセシルが笑う。

「昨日ちゃんと寝た?」

「寝た」

「何時?」

「十時」

「本当に?」

「十時半」

「もう変わった」

「十一時前」

「リリア」

「寝たから大丈夫」

 ノアが肩を震わせている。

「笑わないで」

「いや、ごめん。セシル、完全に保護者だなと思って」

「誰が保護者?」

「セシル」

「私?」

「違うの?」

「同い年だよ」

「知ってる」

「ノアよりしっかりしてる」

「急に僕へ飛んできた」

 前にいたアレンが振り返る。

「お前ら、式くらい静かに聞けねえのか」

「アレン先輩に言われた」

「何で俺だと説得力ねえみたいな顔すんだよ!」

「静かに」

 カイルが言った。

「お前もな」

「俺は喋ってない」

「今喋っただろ」

「お前が話しかけたからだ」

「喧嘩しないでください」

 レオンハルトが小声で割って入る。

「お前が一番まともだな、王子」

「光栄だよ」

「今ちょっと嬉しそう」

 リリアが言う。

「リリアまで参加しないで」

 レオンハルトが苦笑する。

 後ろから、こつん、と何かがリリアの頭へ触れた。

「痛くないけど何?」

 振り返る。

 ルシアンが記録板の端をリリアの頭へ軽く当てていた。

「静かに」

「みんな喋ってる」

「君が中心にいるから」

「私のせい?」

「半分くらい」

「残りは?」

「主にアレン」

「何でだよ!」

 周囲の部隊から笑いが漏れた。

 壇上の学院長が一瞬こちらを見た。

 第十三部隊はようやく静かになった。
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