魔法より、君に恋をする。
『第十三部隊、救助対象一体確保!』

 演習区画全体へ声が響く。

「一番?」

 リリアが聞く。

「今のところは」

 レオンハルトが答える。

 二人は指定地点へ救助対象を運び終えた。

 残り二体。

「みんなは?」

「信号を見る限り、森林組が一体発見してる」

「アレン先輩たちは?」

「まだ」

「手伝いに行く?」

「いや」

 レオンハルトは即答した。

「任せよう」

 リリアが彼を見る。

「うん」

 以前なら。

 自分が行った方が早いと思ったかもしれない。

 でも今は。

「任せる」

「そうしよう」

「じゃあ私たちは?」

「敵部隊の救助を妨害する」

「倒す?」

「君はそれしかないの?」

「分かりやすい」

「まあ、今回は否定しないけど」

 二人で走る。

 数分後。

『第十三部隊、救助対象二体目確保!』

「セシルたち!」

「早いね」

 あと一体。

 観覧席の歓声が大きくなる。

「勝てる」

 リリアが言った。

「まだ油断しない」

「してない」

「顔が楽しそう」

「楽しい」

「それはいいことだ」

 その時だった。

 リリアの足が止まった。

「……」

「リリア?」

 聞こえた。

 何か。

「どうした?」

「今」

 周囲を見る。

 水路。

 石壁。

 風。

 何もない。

「何か聞こえた」

 レオンハルトの表情が変わる。

「声?」

「分からない」

「監督生に信号を」

「待って」

 リリアは耳を澄ませた。

 遠い。

 けれど。

 どこかで。

 泣いている。

「……子供?」

「何?」

「泣き声」

 レオンハルトも耳を澄ませる。

「僕には聞こえない」

「でもいる」

「リリア」

「あっち」

 水路のさらに奥。

 本来なら競技区域の端に近い場所。

「救助対象かも」

「反応はない」

「でも」

 また聞こえた。

 小さな泣き声。

「レオン先輩」

「……分かった」

 レオンハルトはすぐに決めた。

「行こう。ただし僕から離れないで」

「うん」

 走る。

 水路沿いを抜ける。

 競技の音が遠ざかっていく。

 観覧席からも見えにくい区域。

「この先、行き止まりのはずだ」

「でも聞こえる」

「どこから?」

「下」

 二人が止まる。

 地面。

 古い石畳。

 リリアが膝をつく。

「ここ」

「待って」

 レオンハルトが腕を掴んだ。

「触らないで」

「でも」

「ルシアン先輩に信号を送る」

「……うん」

 レオンハルトが緊急信号用の魔石を取り出した。

 魔力を流す。

 赤い光が空へ上がる。

 その瞬間。

 リリアのポケットが熱くなった。

「っ」

「リリア?」

 方位磁針。

 取り出す。

 針が激しく回っている。

「昨日と同じ」

「離れよう」

「うん」

 二人が一歩下がる。

 石畳に。

 黒い線が浮かんだ。

「……」

 一本。

 二本。

 三本。

 リリアは数える。

「四、五、六……」

 嫌な予感。

「七、八、九」

 レオンハルトがリリアの前へ立つ。

「十」

 金色の防壁が展開される。

「十一」

 遠くから声がした。

「リリア!」

 ノア。

「十二」

 黒い線が円を描く。

 そして。

「……十三」

 最後の一本が現れた。

 その瞬間。

 世界から音が消えた。
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