魔法より、君に恋をする。
 生徒会室を出ると。

「遅い」

 廊下の壁にアレンがもたれていた。

「何してるの?」

「待ってた」

「私を?」

「他に誰がいんだよ」

「ルシアン先輩」

「待たねえよ」

「即答」

「当たり前だ」

 アレンはリリアの顔を見る。

「何話した」

「十三本目」

「分かったのか?」

「まだ仮説」

「そうか」

「あと実戦祭終わったらルシアン先輩と出かける」

「は?」

「好きな場所教えてくれるって」

「お前、何で俺にそれ言うんだよ」

「聞いたから」

「十三本目の話だけでよかった!」

「でも話したこと聞いた」

「全部報告しろとは言ってねえ!」

「アレン先輩、うるさい」

「誰のせいだ!」

 その声を聞いて。

 少しだけ安心した。

「……何笑ってんだよ」

「いつも通り」

「何が」

「アレン先輩」

「悪かったな」

「悪くない」

 リリアは少し笑う。

「その方がいい」

 アレンの表情が変わった。

「……何かあったか」

「何も」

「嘘つけ」

「ちょっとだけ考えてた」

「何を」

「私が私じゃなかったらどうしようって」

 アレンの眉間に深い皺が寄った。

「誰がそんなこと言った」

「あの声」

「あれか」

「でも、もうちょっとどうでもよくなってきた」

「……は?」

「だって腹立つ」

 アレンが瞬く。

「勝手に『お前じゃない』って言われるの」

「……」

「私が誰か、なんで知らない人に決められないといけないの?」

 しばらく沈黙。

 そして。

 アレンが笑った。

「ははっ」

「何?」

「いや」

 額へ手を当てて笑っている。

「何がおかしいの?」

「お前だよ」

「失礼」

「違えよ」

 アレンは笑いを収める。

「それでいい」

「何が?」

「そのくらいでいろ」

「偉そう」

「先輩だからな」

「二年生なだけ」

「お前より上だ」

「一個だけ」

「上は上だろ」

 リリアが笑う。

「アレン先輩」

「あ?」

「実戦祭のあと、肉」

「……覚えてんのか」

「忘れないって言った」

「そうだったな」

「夏も」

「お前、本当に秋冬まで予定入れる気か?」

「嫌?」

「嫌じゃねえよ」

 アレンは少しだけ目を細めた。

「全部来い」

 前にも聞いたような。

 でも少し違う。

「うん」

「お前もな」

「分かってる」
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