魔法より、君に恋をする。
 そのあと、アレンと別れたところで。

「リリア」

 今度はカイルに会った。

「今日みんな廊下にいる」

「お前を探しているからだ」

「私人気」

「……否定はしない」

「クロフォード先輩も?」

「何が」

「私探してた?」

「ああ」

「人気」

「調子に乗るな」

「乗ってない」

 カイルはリリアの顔をじっと見る。

「顔色は戻ったな」

「元気」

「そうか」

「それだけ?」

「何が」

「探してた理由」

「無事か確認したかった」

「今確認した」

「ああ」

「じゃあ終わり?」

「……」

「クロフォード先輩?」

「お前は」

 一度言葉を止める。

「今日、一人になるな」

「なんで?」

「念のためだ」

「また声が来るかも?」

「可能性はある」

「分かった」

「寮までは誰と帰る」

「まだ決めてない」

「なら俺が送る」

 リリアは少し笑った。

「何だ」

「前は偶然って言ってたのに」

「何が」

「迷子だから迎えに来た時」

「……」

「今日は自分から送るって言った」

「悪いか」

「嬉しい」

 カイルが黙る。

「じゃあお願い」

「ああ」

 二人で歩き出す。

 しばらくして。

「クロフォード先輩」

「何だ」

「昔の私と、今の私」

 カイルの足がわずかに遅くなる。

「前に聞いたでしょ」

「ああ」

「同じじゃないって言った」

「言った」

「今日もそう思う?」

「ああ」

 迷わなかった。

「ならいい」

「それだけか」

「うん」

「理由は聞かないのか」

「今は」

「……そうか」

「でも一個だけ」

「何だ」

「昔の私の方が好きだったとしても」

 カイルの表情が固まる。

「今すぐ変えなくていいから」

「リリア」

「それはクロフォード先輩の気持ちだから」

 リリアは前を向いた。

「私が決めることじゃない」

「……」

「でも、いつか今の私も好きになってくれたら嬉しい」

 足音が止まった。

 リリアも止まる。

「クロフォード先輩?」

「……お前は」

 カイルが額を押さえる。

「何?」

「本当に分かってないのか」

「何を?」

「俺が今、誰を見ているか」

 低い声だった。

 リリアは彼を見る。

「……私?」

「そうだ」

「でも」

「昔のお前を忘れたわけじゃない」

「うん」

「忘れるつもりもない」

「うん」

「それでも」

 黒い瞳が、真っ直ぐリリアを見る。

「今ここで、俺を困らせているのはお前だ」

「困らせてる?」

「そうだ」

「何した?」

「……」

 カイルは深く息を吐いた。

「もういい」

「またそれ」

「お前にはまだ早い」

「一歳しか違わない」

「そういう意味じゃない」

「分からない」

「知ってる」

 少しだけ。

 カイルの口元が緩んだ。

「行くぞ」

「うん」

     
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