魔法より、君に恋をする。
 その夜。

 リリアはベッドの中で目を開けていた。

 眠れないわけではない。

 ただ。

 少しだけ考えていた。

『お前じゃない』

 まだ怖い。

 気にならないと言えば嘘になる。

 自分が知らない自分。

 自分ではない「リリア」。

 みんなが知っている過去。

 十二本の線。

 十三本目。

 分からないことばかりだ。

 でも。

「……腹立つ」

 ぽつりと呟いた。

 知らない声に、自分が誰かを決められるのは嫌だ。

 過去にも。

 神様にも。

 運命にも。

 まだ名前すら知らない何かにも。

「私が決める」

 何を好きになるか。

 誰と一緒にいるか。

 何を信じるか。

 そして。

 自分が何者なのかさえ。

 全部を自由に決められるわけではないのかもしれない。

 生まれた場所も。

 与えられた名前も。

 持って生まれた魔力も。

 選べないものはある。

 それでも。

 その先をどう生きるかくらいは。

「私が決める」

 もう一度言った。

 少しだけ眠くなった。

 明日は再試合。

 第二部隊。

 救出戦。

 今度こそ最後まで戦う。

 そして六人で帰る。

「……勝つ」

 結局。

 最後に考えることは、いつも一番単純だった。
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