魔法より、君に恋をする。
「顔が戻った」

 朝食の席で、リリアを見るなりアレンが言った。

「昨日もこの顔」

「そういう意味じゃねえ」

「じゃあ何?」

「昨日は考え込んでただろ」

「今日は考えてない」

「極端だな」

「考えても分からなかったから」

 パンへ蜂蜜を塗る。

「分からないことは後で考える」

「お前、たまにすげえよな」

「褒めてる?」

「半分」

「じゃあありがとう」

「半分だぞ」

「半分ありがとう」

「何だそれ」

 アレンの隣でノアが笑っている。

「でも安心した」

「ノアも?」

「昨日の夜、部屋まで行こうか迷ったから」

「来ればよかったのに」

「え」

「何?」

「いや」

 ノアが固まる。

「男子寮から女子寮へ夜に行ったら問題になるよ」

 セシルが冷静に言った。

「窓なら」

「もっと問題だよ」

「魔法で」

「手段の話じゃないかな」

「じゃあ手紙」

「それならいいと思う」

「次からそうする」

「次がある前提?」

 レオンハルトが苦笑する。

「ない方がいいね」

「でも何かあったら送って」

 リリアが言う。

「起きてたら返す」

「寝てたら?」

「朝」

「健康的だなあ」

「寝るの大事」

「昨日十一時まで起きてた人が言う?」

「セシル」

「何?」

「言わない約束」

「してないよ」

 カイルがコーヒーを飲みながら、小さく息を吐いた。

「いつも通りだな」

「誰が?」

「お前が」

「うん」

 リリアはパンを食べる。

「今日勝つから」

「そこに繋がるのか」

「繋がる」

 レオンハルトが笑った。

「なら僕たちも、いつも通りで行こう」

「昨日より強く」

「もちろん」

 セシルが頷く。

 ノアがパンを持ったまま手を上げる。

「異議なし」

「食ってから喋れ」

 アレンが言う。

「アレン先輩も口入ってる」

「……」

「人に言えない」

「うるせえ」

 また笑いが起こった。

 昨日の黒い月も。

 声も。

 十三本目も。

 消えたわけではない。

 けれど今は。

 六人で笑えている。

 それで十分だった。
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