魔法より、君に恋をする。
優勝祝いは、学院近くの小さな食堂になった。

 七人。

 一つの大きなテーブル。

「乾杯する?」

 ノアがグラスを上げる。

「何に?」

 リリアが聞く。

「優勝」

「普通」

「じゃあ、全員無事だったこと」

 一瞬。

 静かになる。

 アレンがグラスを持つ。

「それでいいだろ」

 カイルも。

 セシルも。

 レオンハルトも。

 ルシアンも。

 リリアは最後にグラスを上げた。

「じゃあ」

 少し考える。

「全員で帰ってきたことに」

 七つのグラスが触れた。

「乾杯」

 音が鳴る。

 料理が運ばれてくる。

「肉!」

「アレン先輩うるさい」

「お前が頼んだんだろ!」

「苺もある」

「リリア、こっちのタルト美味しそうだよ」

「食べる」

「一口あげる」

「ありがとう」

「僕のもいる?」

「いる」

「リリア、こっちのチョコも」

「セシルもくれる?」

「もちろん」

「食べすぎるな」

 カイルが言う。

「クロフォード先輩も食べる?」

「話を聞け」

「一口」

「いらない」

「美味しいのに」

「……一口だけだ」

「食べるんだ」

 レオンハルトが笑う。

「レオン先輩も」

「僕も?」

「全員」

「その言葉、最近強いね」

「便利」

「そうだね」

 ルシアンはその光景を眺めていた。

 あまりにも普通だった。

 十五歳の少女が。

 友人たちと笑っている。

 苺を食べて。

 肉を取り合って。

 チョコレートを一口ずつ分けて。

 くだらないことで笑っている。

 これを。

 何かの器と呼ぶのか。

 誰かの代わりと呼ぶのか。

 そんなもの。

 馬鹿げている。

「ルシアン先輩」

「何?」

「食べてない」

「食べてるよ」

「少ない」

「君が食べすぎなんだよ」

「これ美味しい」

 リリアが自分の皿から、小さな焼き菓子を一つ取る。

「はい」

「僕に?」

「うん」

「手渡し?」

「嫌?」

「……嫌じゃない」

 受け取る。

「美味しい?」

「まだ食べてないよ」

「早く」

「急かさないで」

 一口。

 甘い。

「どう?」

「美味しい」

「でしょ」

 満足そうに笑う。

 ルシアンは、その顔を見た。

 第一のリリア。

 過去の記録。

 新規魂。

 独立個体。

 全部。

 今はどうでもよかった。

 少なくとも。

 この瞬間だけは。
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