魔法より、君に恋をする。

第九章 はじめての休日

アルカディアへ入学してから、初めて何の予定もない休日がやってきた。

 授業はない。課題も昨日のうちに終わらせた。特別資料室へ行く予定もなければ、誰かに呼び出されてもいない。

 つまり、完全な自由である。

 だからリリアは朝から机に向かい、魔法書を読んでいた。

「……お前、本気か?」

 女子寮の談話室で本を広げていたリリアを見つけたセシルは、心底呆れたような顔をした。

「何が?」

「初めての休日だぞ」

「うん」

「天気もいい」

「そうだね」

「王都には店もあるし、市場もあるし、学院生なら割引になるところも多い」

「へえ」

「それで、なんで魔法書読んでるんだ?」

「面白いから」

「駄目だ。出かけるぞ」

 セシルは本を閉じた。

「あ」

「今日は休め」

「読書も休みだけど」

「お前の場合は研究だろ」

「違うよ。趣味」

「余計に駄目な気がしてきた」

 納得できない。

 リリアが本を取り返そうとすると、セシルは長い腕を使って届かない位置へ持ち上げた。

「ずるい」

「身長差は有効活用するものだ」

「魔法使っていい?」

「休日の朝から友達に攻撃魔法を使うな」

「浮遊魔法」

「それも駄目」

 どうやら返す気はないらしい。

「どこ行くの?」

「王都」

「二人で?」

「そのつもりだったけど――」

「僕も行く」

 談話室の入口から声がした。

 二人で振り返る。

「なんで男子寮にいるはずの人が女子寮の談話室前にいるの?」

「中には入ってないからいいでしょ」

 ノアが扉の外から笑顔で手を振っている。

「ちょうどリリアを誘おうと思って来たんだ」

「何に?」

「王都」

 セシルとノアの視線がぶつかった。

「……偶然だな」

「本当だね」

「私はリリアと行く予定だった」

「三人で行けばいいじゃない」

「そうだけど」

「何か問題ある?」

「ないよ?」

「ないな」

 二人とも笑っている。

 なぜか空気だけが少し変だった。

「じゃあ三人で行こう」

 リリアが言うと、ノアはすぐに頷いた。

「賛成」

 セシルも一拍遅れて頷く。

「……まあ、それが一番安全か」

「安全?」

「お前を一人で王都に出すよりはな」

「私、子どもじゃないよ」

「分かってる」

「十五歳だけど」

「そこは自覚あるんだな」
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