魔法より、君に恋をする。
王立高等魔法学院《アルカディア》は王都北部の高台に建っている。

 正門から坂を下れば、街の中心部までは歩いて二十分ほどだった。

 休日の王都は、学院とはまるで違う活気に満ちている。大通りには露店が並び、焼き菓子や香辛料の匂いが混ざり合っていた。馬車が行き交い、店先では客を呼び込む声が響いている。

 リリアは興味深そうに周囲を見回した。

「初めて?」

「ちゃんと歩くのは初めて」

「入学の時は?」

「馬車で学院まで行ったから」

「じゃあ今日は案内するよ」

 ノアが自然にリリアの隣へ並ぶ。

「何か見たいものある?」

「魔法具」

「休日なのに?」

「面白そう」

「予想通りすぎる」

 反対側を歩いていたセシルが笑った。

「服とか装飾品は?」

「別に」

「菓子」

「見る」

「即答だな」

「甘いもの好きだから」

「知ってる」

 ノアが何気なく言った。

 リリアがそちらを見る。

「言ったことあった?」

「見てれば分かるよ。食堂でも甘いのよく取ってるし」

「そう?」

「うん」

 答えは自然だった。

 怪しいところなど何もない。

 それなのに、最近のリリアはこういう小さなことが妙に気になる。

 アレンも自分の食べ方を知っていた。

 ルシアンは自分が嫌う言葉を知っていた。

 カイルは理由もなく自分を心配し、レオンハルトは初めて触れた魔力を懐かしいと言った。

 そしてノアは、誰より自然に自分の隣にいる。

「リリア?」

「何?」

「また考え事?」

「ちょっと」

「僕の顔見ながら?」

「うん」

「照れるなあ」

「なんで?」

「そこは分からなくていいよ」

「またそれ」

 リリアが眉を寄せると、セシルが笑った。

「お前、最近それ言われすぎだろ」

「みんな説明不足」

「そのうち分かるんじゃないか?」

「待つの苦手」

「知ってる」

 今度はセシルが言った。

「……セシルまで」

「これは普通に知ってる。三週間も一緒にいれば分かる」

「なるほど」

 それなら納得できる。

「俺の時より納得早くない?」

「ノアは怪しいから」

「ひどい」

     
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