魔法より、君に恋をする。
同じ頃。

 学院の地下深く。

 普段は誰も使わない古い保管室で、ルシアンは机の上に置かれた黒い石を見下ろしていた。

 表面には十二本の細い亀裂が走っている。

「王都で一つ。学院で一つ」

 眼鏡を外し、眉間を押さえる。

 いつもの余裕のある笑みはなかった。

「早すぎるな」

 背後から扉が開く。

「会長」

 教師の声だった。

「石の解析結果が出ました」

「聞こう」

「内部に記録されていた魔力波形ですが、既存の魔法体系には一致しません。ただ、一部だけ非常に強い共鳴反応があります」

「対象は?」

 教師は一枚の紙を差し出した。

 ルシアンは目を落とす。

 そこに記された名前を見ても、驚かなかった。

「……やっぱり君か」

 紙に記されていたのは、たった一人の生徒の名前だった。

 リリア・アステル。

 ルシアンは黒い石へ視線を戻す。

「さて」

 静かな声が地下室へ落ちる。

「今度は、何が彼女を見つけた?」
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