魔法より、君に恋をする。

第十一章 知らない気持ち

 翌日の昼休み、リリアはいつものようにセシルと食堂へ向かった。

「ノアは?」

「先生に捕まってた。後から来るんじゃないか?」

「そう」

 入学してまだ一か月も経っていないのに、三人で昼食を取ることはすっかり日常になっていた。

 セシルが向かいに座り、リリアはその隣に置かれた空席を見る。

 いつもならノアが勝手に座る場所だ。

「……何?」

 セシルがこちらを見ている。

「何が?」

「いや。ノアがいないと静かだなと思って」

「確かに」

「寂しい?」

「少し?」

 答えてから、自分でも考える。

「でもセシルがいなくても寂しいよ」

「……そうか」

「なんで嬉しそうなの?」

「嬉しそうじゃない」

「ちょっと笑った」

「気のせいだ」

 セシルは顔を逸らし、自分の皿から小さな焼き菓子を一つ取った。

「食べるか?」

「食べる」

「ほら」

 差し出されたので受け取ろうとすると、なぜか手を引かれた。

「何?」

「……いや」

 セシルは一瞬迷ったあと、そのまま焼き菓子をリリアの口元へ差し出す。

「食べるんだろ?」

「うん」

 一口かじる。

 甘い。

「美味しい」

「そっか」

 セシルが笑う。

「何?」

「何でもない」

「最近それ多い」

「便利だからな」

 そこへ、聞き慣れた声がした。

「二人で何してるの?」

 ノアだった。

「焼き菓子食べてた」

「ふうん」

 笑っている。

 けれど、なぜか目がセシルの手元を見ている。

「ノアも食べる?」

 リリアが残りを差し出す。

「……それ、セシルがリリアに食べさせたやつ?」

「うん」

「じゃあいい」

「なんで?」

「僕にも僕なりの矜持があるんだよ」

「よく分からない」

「分からなくていいよ」

 ノアがリリアの隣へ座る。

「その代わり今度、僕が何か買ってあげる」

「方位針もらったばっかり」

「じゃあ食べ物」

「甘いのがいい」

「了解」

 向かいでセシルが呆れたような顔をした。

「甘やかしすぎだろ」

「セシルに言われたくないなあ」

「私は普通だ」

「今食べさせてたよね?」

「たまたまだ」

「僕も今度たまたまやろうかな」

「張り合うな」

「張り合ってないよ?」

「二人とも仲良いね」

「どこが?」

「どこが?」

 また重なった。

 リリアは笑った。

「やっぱり仲良い」
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