魔法より、君に恋をする。
「リリア・アステル」

 今度は。

 後ろから。

 低い声。

 振り返る。

 黒髪の三年生。

 深紅の徽章。

「クロフォード先輩?」

 掲示板で見た顔だった。

 学院三年首席。

 カイル・クロフォード。

 名前を呼んだ瞬間。

 彼の目が。

 ほんの少しだけ揺れた。

「……俺を知っているのか」

「有名なので」

「……そうか」

 今日は。

 そればかりだ。

「手を見せてくれ」

「嫌です」

「……」

「……」

 セシルが隣で噴き出した。

「リリア、三年生相手でも容赦ないな」

「だって突然手を見せろって怖くない?」

「まあ、怖い」

 カイルが困ったように眉を寄せる。

「魔晶石の破片で怪我をしていないか確認したいだけだ」

「してません」

「本当に?」

「本当です」

「……頼む」

 その声が。

 思っていたよりずっと弱かった。

 リリアは少し迷う。

 仕方なく。

 手を差し出した。

「どうぞ」

 カイルの手が触れる。

 指先。

 掌。

 傷がない。

 それを確認した瞬間。

 明らかに。

 彼が安堵した。

「……良かった」

 どうして。

 そんな顔をするんだろう。

 初めて会った先輩なのに。
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