魔法より、君に恋をする。
 階段を下りている途中、小さな鳴き声がした。

 リリアが止まる。

「今、何かいた」

「気のせいだ」

「猫?」

「違う」

「猫だ」

「違う」

「なんで否定するんですか?」

「……」

 もう一度鳴く。

 階段下の小さな扉の向こうからだ。

 リリアが覗き込む。

 そこには、灰色の猫がいた。

「猫」

「……」

「クロフォード先輩」

「何だ」

「この猫、先輩見てる」

「気のせいだ」

「寄ってきた」

 猫は迷うことなくカイルの足元へ行った。

 そして座る。

「知り合い?」

「猫と知り合いという表現はおかしいだろ」

「名前は?」

「知らない」

「本当に?」

「……」

「クロフォード先輩」

「灰色」

「それ名前?」

「俺が勝手に呼んでるだけだ」

 リリアは黙った。

「何だ」

「可愛い」

「猫が?」

「先輩が」

「……帰るぞ」

「待って」

 カイルは歩き出した。

 耳が赤い。

「餌あげてる?」

「たまにだ」

「撫でる?」

「たまに」

「好きなんですね」

「嫌いではない」

「今度一緒に見に来てもいい?」

 カイルが止まる。

「猫を?」

「うん」

「……好きにしろ」

「じゃあ来ます」

「一人でここまで来られるのか」

「迎えに来て」

「俺が?」

「猫の場所知らないから」

「今見てるだろ」

「次来たら迷うかもしれない」

「自覚があるのか」

「最近」

 カイルが笑った。

 ほんの一瞬だった。

 けれど今まで見た中で一番自然だった。

「先輩」

「何だ」

「今の顔、好き」

 笑顔が消えた。

「……」

「なんで戻すの?」

「お前のせいだ」

「褒めたのに」

「だからだ」

「よく分からない」

「分からなくていい」

 また言われた。
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