魔法より、君に恋をする。
資料室を出ようとした時、廊下から慌ただしい足音が聞こえた。

 一年生らしい男子生徒が二人、資料を抱えて走っている。

「走るな」

 カイルが一言告げる。

 二人は飛び上がるように止まった。

「す、すみません!」

「資料を落とすぞ」

「はい!」

 ものすごく怯えている。

 カイルが通り過ぎると、二人は深々と頭を下げた。

 リリアはその背中を見てから、カイルを見る。

「怖がられてますね」

「知ってる」

「気にしない?」

「困ることはない」

「寂しくない?」

 カイルがこちらを見る。

「なぜそうなる」

「みんな先輩と話したら、思ってたより優しいって分かるのに」

「別に分からなくていい」

「もったいない」

「何が」

「クロフォード先輩が」

 カイルの足が止まった。

「……俺?」

「はい」

「俺の何がもったいない」

「本当は優しいのに、怖い人だと思われてるところ」

「お前が分かっていれば十分だ」

 あまりにも自然に言われたので、リリアは数歩進んでから止まった。

 振り返る。

 カイルも止まる。

「今の」

「忘れろ」

「嫌です」

「……そう言うと思った」

 諦めたような声だった。

「私だけでいいの?」

「言い方を変えろ」

「なんで?」

「頼むから」

 昨日も似たことを言われた気がする。

 先輩たちは、意外と注文が多い。
< 97 / 296 >

この作品をシェア

pagetop