私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
 その姿にかすかな違和感を覚えて、佳穂は内心で首を傾げる。
 職場なのだから、意味ありげに見つめ合うわけにもいかないし、彼の行動自体はおかしくない。
 けれど、目を逸らす直前の彼の表情が、ほんの少しだけ暗く見えたような。
 いつも感情を表に出さない人だけに、そのわずかな陰りが妙に引っかかる。

 ――気のせい、かな。

 ほんの一瞬のことだったため、佳穂はそれ以上考えることなく自席についた。



 それからも二人の交際は順調だった。
 植物公園でのデートで佳穂もだいぶ慣れてきたのか、雅芳と向かい合っての食事もあまり緊張せずに話せるようになってきた。
 デートの回数も片手を超えて、雅芳と過ごす時間は日常の一部になりつつあった。

 それでも思うのは、彼はやはり完璧だということだ。
 容姿や能力だけではなくて、スマートな振る舞いも、デートでのエスコートも、恋人への気遣いも。
 彼と一緒にいると、自分が特別な女性になったような気分になる。
 それくらい雅芳の態度は紳士的で素晴らしかった。

 だから――これはたぶん、私が欲張りなんだと思う。
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